越境する家族――在日ベトナム系住民の生活世界

  • 『越境する家族』表紙川上郁雄 著
  • 2001年3月刊,314p,明石書店;¥3,675 (税込)
  • ISBN:9784750313856,9784750390161(オンデマンド版,2005)

「インドシナ難民」として入国,定住したベトナム人の定住過程と精神世界を歴史的背景をふまえ,コミュニティ・ネットワークと生活戦略,家族観の変容,祖国や他の定住国の親族ネットワーク,世代間コミュニケーションなどの視点から浮き彫りにする。

目次

序章

第一章 「ベトナム難民」のとらえ方

一 研究意義と目的
  1. 国民国家と難民
  2. 難民研究への文化人類学的アプローチ
  3. 「インドシナ難民」研究への視角
二 日本に定住する「ベトナム難民」のとらえ方
  1. 難民の定義とその限界性
  2. 「インドシナ難民」の歴史的背景
  3. 「インドシナ難民」への国際的対応
  4. 「インドシナ難民」への日本の対応
  5. 日本における「インドシナ難民」の法的地位
  6. 「難民」が「難民」でなくなるとき
  7. 「ベトナム難民」から「べトナム系住民」へ

第二章 調査の概要と研究視点

一 調査の概要
二 研究視点

第三章 ベトナムの歴史と文化

一 地理的環境
二 19世紀までの歴史と文化
  1. 海のシルクロード
  2. 民族意識と地域性の形成
  3. ベトナムの統一・前近代
  4. 村落社会
  5. 親族組織
  6. 儒教文化
三 二〇世紀初頭からサイゴン陥落まで
  1. 植民地時代のべトナム
  2. 独立運動と第一次インドシナ戦争
  3. 第二次インドシナ戦争――ベトナム戦争
  4. 都市での生活
四 一九七五年以後
  1. サイゴン陥落後
  2. 社会主義への道
  3. 経済政策と教育
  4. 第三次インドシナ戦争
  5. ドイ・モイ - 刷新

第四章 コミュニティと社会的ネットワークの形成

一 在日べトナム系住民の人口動態の諸特徴
  1. 日本における「インドシナ三国」国籍者の人口とその基本的性格
  2. 人口構成
  3. 居住地域
  4. 人口動態の諸特徴
二 コミュニティの形成
  1. 大阪府八尾市の「べトナム人自治会」 事例1
  2. 神戸市長田区の「カトリック共同体」 事例2
  3. 分析 - コミュニティの形成過程
三 社会的ネットワークの形成
  1. 親族
  2. 同郷出身者と中国系ベトナム人
  3. 民族的諸組織
四 考察

第五章 定住適応過程と家族観の変容

一 「ベトナム難民」六〇世帯のプロフィール
  1. 家族と子供
  2. ベトナムでの生活
  3. ベトナム出国から日本入国まで
  4. 日本への入国から定住まで
  5. 日本での生活
  6. 六〇世帯に見る定住適応過程
二 「家族」の再生と適応過程
  1. ひとり「難民船」に乗せられたトラン青年の場合――ケース1
  2. 息子ひとりを連れて出国したビンの場合――ケース2
三 家族観の変容
  1. 核家族
  2. 夫婦の関係
  3. 親子関係
  4. 若者世代
四 むすび

第六章 越境する家族

一 「難民」としての生活戦略
  1. 「難民」としての脱出
  2. 帰化
  3. 越僑
二 家族のネットワーク
  1. 一時帰国したキエットの場合――ケース3
  2. ベトナムヘの輸出業を営むミンの場合――ケース4
  3. ベトナムに家を建てたティエンの場合――ケース5
三 考察

第七章 宗教実践とエスニツク・アイデンティティ

一 ベトナム系住民にとっての宗教実践とは何か
二 べトナム系住民の宗教実践
  1. 生活世界を規定するもの
  2. カトリック教徒の宗教組織と宗教生活の特徴
  3. 仏教徒の宗教組織と宗教生活の特徴
  4. 宗教的リーダーのプロフィール
  5. ある婦人の語リ
三 考察

第八章 日本社会とベトナム系住民――その日常と展望

一 コミュニケーションとネットワーク
二 展望――若者たちの心性
  1. オーストラリアに移住したドンの場合――ケース6
  2. アメリカで勉強してきたフィーの場合――ケース7
  3. 日本に帰化したヒェンの場合――ケース8
  4. 考察
三 再び「在日ベトナム系住民」とは

あとがき――「越境する家族」の物語は続く