宮崎里司研究室への入門を希望される方へ

宮崎里司研究室では,「日本語母語話者と非母語話者が参加する接触場面で起きるインターアクション問題の分析」をメインテーマとし,文法能力,社会言語能力,社会文化能力という,総合的なインターアクション能力を習得させるためには,学習者や教師,さらには他のネットワーク参加者が,学習者自身の言語習得や習得環境に,どのように働きかけるべきかについて考察し,日本語教育や第二言語習得研究に,どのように応用できるかを検証します。

関連研究分野としては,以下のトピックが射程域に入るでしょう。

  • 言語管理(ミクロ・マクロレベルの調整行動)
  • 談話習得
  • 意味交渉
  • 学習ストラテジー(学習スタイル,ビリーフスなども含む)
  • 自律学習(自然習得を含む)
  • アカデミック・ジャパニーズ(講義理解,アカデミック・ライティングなど)
  • 遠隔日本語教育(ビデオ会議システム,オンデマンド)
  • 脳の言語処理過程(事象関連電位 Event Related Potentials:ERP)
  • 眼球運動測定によるインターアクション分析
  • 地域の日本語学習者支援(夜間中学日本語学級など)
  • バイリンガル・イマージョンプログラム
  • 年少者の日本語習得
  • 言語教育政策
  • 語用論・スピーチアクト
  • そのほか,各大学院生の研究紹介コーナーを参照ください。

さらに,この研究室で遂行される実証研究の特徴は,テーマの多様性だけではなく,研究方法にもあります。

では,なぜ方法論は重要なのでしょうか。それは,きちんとした,調査研究の方法論を習得しないと,自ら選んだ研究課題の実態の解明が困難になるからです。たとえば,アンケート調査は,社会調査法の中では,有効な方法論として認識されているが,一方では,社会の平均的なアウトプットを代表しているだけで,そこには,バリエーションやコンフリクトといった要素は,詳細に現れてきません。

現在,言語学の実証研究で応用されている方法論は,文献調査やアンケート調査のほかに,VTR(録画),ATR(録音),フォローアップ・インタビュー,インターアクション・インタビュー,参与観察,脳波,アイカメラ,回想法,発話思考法,学習ダイアリー,再生刺激法などがあります。こうした方法論の意義についても,研究室の演習で扱っていきます。

言語習得研究室関連の,理論研究や演習については,代表的な内容を,以下に紹介しておきましょう。

理論研究「第二言語習得論」

主な理論的フレームワークや実証研究を紹介し,関連する研究論文のレビューを行います。

談話習得の分野では,実際の接触場面で現れたコミュニケーション問題を解決するための,調整行動を含んだディスコースを分析します。さらに,意味交渉に関するこれまでの先行研究のレビューを行い,実際のディスコースの中からモデルとすべき調整談話を考察していきます。

学習ストラテジー研究では,これまでの研究動向をもとに,今後どのような理論的発展が望まれるかを考えるとともに,学習者が自らの学習行動をどのように管理すべきかについてもあわせて考察します。

その他,自然習得,自律学習といったキーワードのものでは,教師の言語習得管理下に置かれていない学習者(外国人力士や,外国人温泉女将など)を例に,彼らの習得ストラテジーを解明していきます。

演習

第二言語としての日本語習得研究を中心に,どのような先行研究があるかを調べながら,学生が設定した研究課題に関連した参考文献のリストを作成させる作業を行います。あわせて,リストされた文献を参考にしながら,論文で応用する理論を構築するための手法について考えます。さらに,統計処理の方法を応用しながら,実際に収集されたディスコースのデータを分析していきます。