東北こども支援プロジェクト――日本語を学ぶ子どもたちの心とことばの学習を支えるネットワーク構築プロジェクト

本研究プロジェクトは,東日本大地震で被災した「日本語を学ぶ子どもたち」の心のサポートとことばの学習を支え,同時に支援ネットワークの構築をめざすプロジェクトです。

東北地方の青森県,岩手県,宮城県,福島県の4県には「日本語指導が必要な外国人児童生徒」(文部科学省,2008年)は約250名おり,日本人の子どもたちと同様に今回の震災の被害を受けていると思われます。

本プロジェクトは,国籍にこだわらず,これらの被災した「日本語を学ぶ子どもたち」の心のサポートとことばの学習を支えることを目的に立ちあげるものです。

活動内容

本プロジェクトでは,今年度一年間に,以下の3つのテーマをもとに,東北地方にいる「日本語を学ぶ子どもたち」を対象に,心とことばの学習を支える支援を行います。

支援の対象となる子どもたちは現在,避難所や親せきや知人宅に分散しています。そのため,仙台市,石巻市,気仙沼市などで,これらの子どもたちへの支援をこれまで行ってきた「外国人の子ども・サポートの会」(事務局:田所希衣子,仙台市泉区)を中心に,それをサポートする「早稲田こども日本語クラブ(早稲田大学:わにっ子クラブ)」,および「みやぎ児童生徒の日本語教育を考える会(宮城教育大学:代表,市瀬智紀)」がこのプロジェクトを実施します。

1年間の支援活動を通じ,本プロジェクトは,避難所生活を脱出したあとの子どもたちの「心とことばの学習」をテーマに長期的な支援を行うネットワークづくりを目指します。

支援活動と方法

第Iステージ:2011年5月より8月(子どもたちへの日本語指導とリライト教材の開発と提供)

仙台に拠点を持つ「みやぎ児童生徒への日本語教育を考える会」および「外国人の子ども・サポートの会」が中心に,各県の教育委員会,国際交流協会等の協力をいただきながら,宮城県,福島県,岩手県,青森県を中心にした外国人児童生徒の実態を把握し,ニーズを確認します。そのうえで,各地の日本語ボランティアを通じて,これらの子どもたちへの日本語指導の支援を実施します。具体的には,各地の日本語ボランティアが行う子どもたちへの日本語指導を支援し,教材,参考書等の教具を提供しつつ,子どもたちへやさしい日本語を使った心のサポートを行います。

同時に,学校で使用する教科書を書き直したリライト教材を含む教材作成および支援の方法について,早稲田大学の「早稲田こども日本語クラブ(わにっ子クラブ)」および宮城教育大学において,開発作業を行います。

第IIステージ:2011年8月(東北地方の被災した外国人児童生徒への支援ネットワークの構築)

上記の活動をもとに,東北地方に居住する外国人児童生徒への直接指導および遠隔指導を行うネットワークの要として「東北こども支援リソースセンター(仮称)」を構想します。5月から8月までの活動をもとに,中長期的な指導および支援ができる体制づくりが必要になるため,このネットワークづくりを行います。また,それまでの実践成果を常にHP等で発信し,多くの子どもたちの「心のサポート」を行う。

第IIIステージ:2011年9月より2012年2月まで(世界の子どもたちとの「心のサポート」交流)

東北地方で震災の被害を受けた「日本語を学ぶ子どもたち」も,日本人の子どもたちも含めた支援として,絵本を読む音読大会や世界各地の子どもたちとことばを使った交流の実践を展開します。世界各地の子どもたちと郵便やメール,スカイプ等で結び,心のサポートを行う。

第IVステージ:2012年3月(子どもたちの発表会および実践の成果発表)

本プロジェクトの実践の成果を,早稲田大学で行う国際シンポジウム「「移動する子どもたち」のことばとアイデンティティ」で発表します。

本プロジェクトの主な支援メンバー

  • 川上郁雄(早稲田大学大学院教授,「早稲田こども日本語クラブ」会長)
  • 市瀬智紀(宮城教育大学教授,「みやぎ児童生徒の日本語教育を考える会」代表)
  • 田所希衣子(「外国人の子ども・サポートの会」代表)
  • 池上摩希子(早稲田大学大学院教授)
  • 宮川健郎(武蔵野大学教授,日本国際児童図書評議会副会長)
  • 尾関 史(早稲田大学日本語センター・准教授)
  • 太田裕子(早稲田大学オープン教育センター・助教)
  • ほか,早稲田大学大学院日本語教育研究科院生たち