理論研究:音声・音韻

担当教員
戸田貴子(日本語教育研究科 教授)
期間
2007年4月10日~2007年7月17日(半期科目)
時間
火曜日2限 10:40-12:10
場所
西早稲田キャンパス 22号館 602号室

講義内容

本講義は,日本語音声学・音韻論の理論的考察を通して,日本語教育への応用を前提とした音声研究の検討を行うことを目的とする。まず,日本語の音声言語の基盤となる五十音,モーラ,アクセント,イントネーション,プロミネンス,ポーズを概観した上で,外来語音,連濁・転音,縮約・融合,無声化,促音化,撥音化等,話し言葉における様々な音声現象について考察し,情報伝達行為において音声が果たす役割について学ぶ。次に,聴取実験や音声解析を通して,知覚と生成の両側面から日本語学習者による音声習得のプロセスとその問題点について考えていく。最後に,音声と文法,音声と丁寧さ,談話におけるあいづちの音声等のテーマについて,より広い日本語教育への応用を視野に入れた音声研究の検討を行う。

評価

課題,期末レポートおよび授業参加により評価を行う。(課題40%,期末レポート40%,授業参加20%)

オフィスアワー

木曜日12:00-1:00。toda@waseda.jpに連絡の上,事前予約をすること。質問・相談もメールにどうぞ。

出席・その他

出席は60%以上必要とする。病欠,休学などによる受講取消も上のメールアドレスに連絡すること。

参考文献

  • 戸田貴子(2004).『コミュニケーションのための日本語発音レッスン』スリーエーネットワーク.

参考資料として,授業開始時にハンドアウトおよび参考文献リストを配布する。

授業予定

月 日テーマ講義内容(キーワード)
1.
4月10日
ガイダンス
2.
4月17日
日本語教師に音声学・音韻論は必要か―日本語教師に求められるもの日本語学習者の音声,学習者ニーズ(アンケート1)
3.
4月24日
声はどのようにしてつくられるか―発音のしくみと母音・子音呼吸と気流,音声器官,声の種類,調音点,調音法,有声音,無声音,有気音,無気音国際音声記号(IPA)
4.
5月1日
日本語の音はいくつあるか―新五十音図拡大五十音図,新五十音図,直音,濁音,半濁音,拗音,長音,促音,撥音,ヘボン式ローマ字,訓令式ローマ字,五十音配列,唇音退化,ハ行転呼
5.
5月8日
日本語の音にはどのような体系があるか―音声と音韻音素,条件異音,自由異音,相補分布,対立分布,ミニマルペア
6.
5月15日
言語音にはどのような単位があるか―拍と音節回文,複合語,音節構造,開音節,閉音節,モーラ言語,音節言語,連母音,二重母音
7.
5月22日
音声にはどのような型があるか―アクセント1アクセント型,アクセント規則
8.
5月29日
音声にはどのような型があるか―アクセント2品詞別アクセント,複合語アクセント
9.
6月5日
音声にはどのような機能があるか―イントネーション表現意図とイントネーション,文法機能とイントネーション,文末イントネーション,終助詞のイントネーション
10.
6月12日
より豊かな音声表現のために何が必要か―プロミネンス・ポーズ際立ち,際立たせ,卓立,アクセントとプロミネンス,ポーズの機能,意味上の境界,統語上の境界,聞き手の理解,ポーズの回数・挿入位置・持続時間
11.
6月19日
外来語の発音は原語となぜ異なるか―外来語化規則外来語化規則,開音節化,促音化,子音の無声化,外来語短縮過程,外来語アクセント規則
12.
6月26日
書き言葉と話し言葉にはどのような違いがあるか―話し言葉における音変化書き言葉と話し言葉の特徴,縮約,融合,無声化,促音化,撥音化,連濁,転音
13.
7月3日
学習者はどのように日本語音声を習得するか―第二言語音声の知覚と生成聴取実験,音声解析,範疇知覚,生成ストラテジー,音声習得プロセス,習得順序,対照分析仮説,誤用分析,中間言語研究,母語干渉,母語転移,過剰般化,近似化
14.
7月10日
自然な会話における音声は聞き手に何を伝達するか―音声と談話分析言語的要素,パラ言語的要素,非言語的要素,ピッチ曲線,発話速度,言いよどみ,フィラー,あいづち,発話機能,発話の重なり,あいづちの頻度,ポーズ,音声と丁寧さ
15.
7月17日
(最終日)
音声解析によって何が分かるのか―音響音声学音響音声学,音の高さ・長さ・大きさ・質,周期,周波数,正弦波,複合波,波形,ピッチ曲線,スペクトログラム

※授業予定はあくまで便宜的なものであり,進度に合わせて変更の可能性もある。