2004年4月入学(7期生)

金海美(キム ヘミ)

修士論文テーマ:韓国人日本語学習者によるいわゆる「尻上がり」イントネーション――ソウル方言話者と慶尚道方言話者を中心に

本研究では,韓国人日本語学習者の日本語の発話中に現れる句末イントネーションのあるパターンとして「それがぁ,もちろん,行ってぇ」のように句末を伸ばすうえにその音調が上がるパターンであるいわゆる「尻上がり」イントネーションの音響分析を主に行う。日本語母語話者の中でも「尻上がり」イントネーションというこれと似たようなパターンが普及されており,韓国人日本語学習者の場合はいわゆる「尻上がり」イントネーションと名づけることにする。

本来,日本語の文(または,句)は,「へ」の字型イントネーションを成しており,文末(または,句末)だんだん下がる構造である。しかし,下がるべきのところで再び上昇が起こると,日本語の「へ」の字型イントネーションから逸脱する結果となる。そして,聞き手に「不快に思う」「聞いて疲れる」「落ち着きがない」「失礼な感じ」などマイナスの聴覚印象を与えてしまう。

これに関しては,無アクセント方言であるソウル方言話者の日本語の発話中によく現れることから,ソウル方言の影響がその原因の一つであると先行研究に指摘されている。しかし,韓国人日本語学習者の中で,ソウル方言話者以外の他方言話者の発話にも当該イントネーションがしばしば観察される。

それで,本研究では,まず有アクセント方言である慶尚道方言との音響的な対照を行い,その実態を明らかにすることとその原因は何かを探ることを目的とする。調査方法としては,読み上げ形式ではなく,説明形式の自然発話を両言語で録音し音響分析を行うと共にアンケートによる使用の意識調査を行う。

本研究が,日本語においてはコミュニケーションを的確にかつ豊かにするための研究に,そして韓国語においては両母方言の韻律研究に役立てたらと思う。

そのほか

  • 出身:韓国の釜山(プサン)
  • 趣味:ジムで汗をかくこと!最近はパワーヨガにはまっています。

河イル黙(ハ イルムク)

研究テーマ:韓国人日本語学習者のおける日本語破擦音「ツ」の生成と知覚に関する考察

韓国人日本語学習者が日本語発音の習得の際,母語の影響により日本語の破擦音「ツ」の習得が困難であることが明らかになっています。

韓国語は日本語とは異なる音韻体系をなします。また,韓国語には存在しない音韻が日本語にはあります。日本語の発音「ツ」は韓国語にない発音なので韓国人学習者にとって「ツ」の発音は難しいです。

そのために,三つの問題点が考えられます。

まず,意味の伝達に誤解を招くことです。例)「ツウガク」➔「チュウガク」

次に,母語で代用しているため日本語らしくない発音になることです。例)「つうがく」[tsµkµe]➔[tþH'µkµe],[tþHµkµe]

三つ目に,発話者の能力の評価に影響することです。「ツ」の発音が「チュ」になると子供のような印象を与える場合があります。

上記のような「ツ」の発音における問題は,多くの先行研究より指摘されており,発音指導の重要性を呼びかけています。

しかし,今までの先行研究では,主に単音レベルにおける調査にとどまっており,実際のコミュニケーションの場面を考慮したものはほとんどないです。従って,本研究では文レベルでの生成調査を行います。同時に,知覚調査,アンケート調査も行います。

本研究は「効率的に学習効果を挙げるためには学習者の母語と学習すべき外国語との比較から出発しなければならない」というLado(1957)に基づき,日本語と韓国語の対照分析を行いつつ,母語の影響において述べます。

本研究の調査内容は下記のとおりです。

  1. 日本語母語話者は韓国人日本語学習者の発音をどう聞くか。日本語母語話者の聴覚判断より,韓国人日本語学習者の「ツ」の発音の傾向と母語干渉の程度を分析します。
  2. 韓国人日本語学習者は日本語の「ツ」「チュ」「ス」を母語でどう知覚しているかを調べます。
  3. 韓国人日本語学習者の発音「ツ」に対する学習経験や学習意識についてアンケート調査を行います。

そのほか

  • 出身:韓国 ソウル
  • 趣味:水泳,ミュージカル鑑賞。04年からフルートを習っていますが,世の中にはたやすく出来るものはないとのことを実感しています。