2005年9月入学(10期生)
児崎 静佳(コザキ シズカ)
修士論文:中国語母語話者の長音の生成に関する一考察――単語内の長音位置による難易度を中心に
中国語母語話者にとって長音の習得が困難であるといわれています。そこで,本研究では学習者にとって単語の中のどの位置にある長音の生成が難しいのかを検証し,発音指導への応用をめざします。
そのほか
- 出身地:宮崎県
雷 寶茵(ルイ ポーヤンイバ)
研究テーマ:香港人広東語母語話者による日本語アクセントの生成の実態―複合名詞を中心に
香港の日本語教育現場では,音声・発音に関する指導と言えば,入門期の単音レベルの指導に留まっている。香港の日本語教育において,音声指導のためのカリキュラムが整備されていないのは現状である。アクセントに関しては言うまでもなく,日本語の音声に関する知識が大変不足していると予想られる。
また,日本語と広東語の音声構造がかなり違うため,広東語母語話者が外国語を習う時にいつも母語にある特有の多声調の「上がったり,下がったり」する癖を持ち込むようになる。母語の干渉で,この「日本語らしくないアクセント」は,広東語母語話者の日本語の発音において最大の問題点であると考える。それゆえ,広東語話者の発音が自然な日本語に聞こえるようにするためには,韻律方面に注目する必要があると言えよう。韻律といえば,文レベルのイントネーションの方を重視すべきだと思われるかもしれないが,アクセントの習得はその土台のように,大変重要で,不可欠だと思う。つまり,イントネーション習得のためには,アクセント習得が重要な要素となると考えられる(中川,2002)。
本研究は,広東語を母語とする香港人日本語学習者の日本語アクセントに焦点を当てて,音声上に見られる特徴や問題点を明らかにすることを目的とする。声調言語を母語とする香港人広東語母語話者の日本語はよく起伏が激しいと言われるが(Lai,2002),特殊拍と二重母音を含む語において,音節ごとに「平ら」なアクセントという結果を報告した先行研究(野沢・重松,1998)もある。そこで,本研究は香港人広東語母語話者を対象にし,複合名詞を中心に,日本語アクセントはどんな特徴があるのかを明らかにする。
そのほか
- 出身地:香港
- 趣味:読書,パン作り,テニス,カラオケ・・・
朴 愛京(パク・エギョン)
研究テーマ:韓国人日本語学習者のイントネーションと表現意図の伝達―「そうですか」の使用場面において
音声を媒介としたコミュニケーションにおいて非常に重要であり,話者の心的態度や表現意識に深い関わりを持つイントネーションについて,韓国ソウル方言話者(以下KSL)の日本語の発話に見られるイントネーションの特徴と誤用の原因を明らかにする。日本人が日常会話で多く使っている表現のひとつに「そうですか」がある。また,「そうですか」のイントネーションには多様なバリエーションがあり,そのイントネーションによって話者の伝わる気持ちが変わってくる。しかし,日常会話でよく使われているのにも関わらず,「そうですか」のイントネーションだけを日本語教育のシラバスに含まれることは少ない。したがって,日本語と異なるイントネーションの体系を持っているKSLの発話の中の「そうですか」のイントネーションには強く韓国語の母語転移が見られる。本研究では表現意図によって変わる「そうですか」のイントネーションに着目し,実際の音声に基づいて考察を行う。それで,日本語と韓国語の異なるイントネーションの特徴を明らかにするために,「そうですか」のイントネーションの中,表現意図の異なる3つの場面((1)喜び(2)がっかり(3)疑い)を設定,KSLと日本語母語話者(以下NSとする)の音声の音響分析を行う。その後,KSLの発話に対して,聴取実験を行い,3つの場面においてのそれぞれの表現意図がうまく伝わったグループと伝わらなかったグループにわけ,KSLのそれぞれの特徴を比較,考察する。KSLとNSのイントネーションの相違点やその聴取実験の結果から,本研究の教育現場での応用の可能性を示唆できるものと考える。
そのほか
- 出身地:韓国 ソウル
金 周熙(キム ジュヒ)
研究テーマ:母語音韻への代用意識が日本語の清濁音の習得に与える影響
母語音韻の知識が日本語清濁音の知覚に与える影響日本語の破裂音カ・タ・パ行はそれぞれ清音と濁音の二項対立を持ちます。それに対して韓国語の破裂音ではそれぞれ平音・激音・濃音の三項対立を持つため,今まで韓国語母語話者の日本語破裂音で見られる発話,知覚における誤用は多くの場合,母語の転移として説明されてきました。本研究では特に知覚における誤用の原因がどのようにものかを明らかにすることを目標とします。
まず,先行研究の結果をふまえた仮設として「韓国語母語話者は日本語破裂音を弁別する際,韓国語破裂音の弁別に用いる判断基準を使う」「韓国語母語話者は韓国語破裂音のうち‘平音’を‘有声音’として認識する傾向がある」の2点を提示します。そして,日本語学習歴のある韓国語母語話者40人と,日本語学習歴のない韓国語母語話者40人を対象にそれぞれ有意味語,無意味語の聞き取り,紙面テスト等を行います。聞き取りの誤用率と韓国語表記の関連性,学習歴の有無によって表記に傾向が現われるかなどを調べることにより原因の詳細が把握できると期待されます。
本研究の意義は,今まで傾向として現われている誤用の原因を明らかにできること,また,発音指導のための基礎知識をとして役立てることにあると思います。
研究業績
- 金周熙(2006).初級クラスにおける発音指導『日本語教育実践研究(早稲田大学大学院日本語教育研究科)』5.
そのほか
- 出身地:韓国 ソウル