日本語教育学特殊研究(9):実践研究ポートフォリオ――その方法と課題
2010年度から「日本語教育学特殊研究(9)」として「実践研究ポートフォリオ」という授業を新たに始めます。これは,日研生が今までの自分の実践を振り返り位置づけるための授業です。
- 金曜2限,春学期・秋学期
- 担当教員:舘岡洋子,細川英雄
- 受講対象者:「実践研究」をすでに1科目以上受講した人
講義内容
日研生は「実践研究」という授業をとることが必修となっているが,各人は実践研究をどのように位置づけ,どのように自らの教育観を形成していっているであろうか。本講座は以下の2本柱で実践研究について検討する。最終的には,受講者自身が日本語教育学と自分との関係を問い直し,自分自身にとっての実践研究とは何かをつかむことができることをめざしている。
(1)論文講読とディスカッション
実践研究に関する論文を読み,参加者間でディスカッションをし,実践と研究の関係,自分自身にとっての実践研究について考える。取りあげる予定の論文は備考欄に掲載した。
(2)実践研究授業を位置づける試み
すでに受講した「実践研究」および受講中の「実践研究」を振り返り,自分自身が何を学んだのか,その中でどのような学習観,授業観,教育観が醸成されたのかを検討する。ワークショップのスタイルで実施し,受講者間のインターアクションにより自らの内省を深めることを試みる。
授業計画
- オリエンテーション,授業の目的・考え方・方法の説明,「実践研究」に関連するフィールドの紹介
- 講読・ディスカッション(1)(細川,2005,2007,2008)
- 講読・ディスカッション(2)(秋田ほか,2008:2章)
- 講読・ディスカッション(3)(佐伯ほか,1998:1,2章)
- 講読・ディスカッション(4)(石黒,2004)
- 講読・ディスカッション(5)(横溝,2000:1,2章)
- 講読・ディスカッション(6)(舘岡,2008,2009)
- 実践の振り返りと位置づけ(1)
- 実践の振り返りと位置づけ(2)
- 実践の振り返りと位置づけ(3)
- 実践の振り返りと位置づけ(4)
- 話題提供とディスカッション(私にとっての実践研究)(1)
- 参加者各自が実践研究について意見を出し合いディスカッションする。
- ディスカッションの内容を最終レポートに反映させる。
- 話題提供とディスカッション(私にとっての実践研究)(2)
- 話題提供とディスカッション(私にとっての実践研究)(3)
- レポート相互評価
教科書
毎回,読むべき論文を指定する。備考欄を参照のこと。
評価方法
- ディスカッションへの参加: 50%
- レポート: 50%
相互評価により評価する。
備考:文献
講読・ディスカッションでとりあげる論文および参考文献を以下にあげる(変更の可能性あり)。
- 秋田喜代美,恒吉僚子,佐藤学(2005).『教育研究のメソドロジー』東京大学出版会.
- 秋田喜代美,キャサリン・ルイス(2008).『授業の研究――教師の学習:レッスンスタディへのいざない』明石書店.
- 石黒広昭(2004).フィールド学としての日本語教育実践研究『日本語教育』120,1-12.
- 佐伯胖,宮崎清隆,佐藤学,石黒広昭(1998).『心理学と教育実践の間で』東京大学出版会.
- ショーン,ドナルド(2001).佐藤学,秋田喜代美(訳)『専門家の知恵――反省的実践化は行為しながら考える』ゆみる出版.
- 舘岡洋子(2008).協働による学びのデザイン――協働的学習における「実践から立ち上がる理論」.細川英雄,ことばと文化の教育を考える会(編)『ことばの教育を実践する探求する――活動型日本語教育の広がり』凡人社.
- 舘岡洋子(2009).多様な価値づけのせめぎあいの場としての教室――授業のあり方を語り合う授業と教師の実践研究『早稲田日本語教育学』7.
- 細川英雄(2005).実践研究とは何か――私はどのような教室をめざすのかという問い『日本語教育』126,4-14.
- 細川英雄(2007).日本語教育学のめざすもの――言語活動環境設計論による教育パラダイム転換とその意味『日本語教育』132,79-88.
- 細川英雄(2008).日本語教育学における「実践研究」の意味と課題『早稲田日本語教育学』3,1-8.
- 横溝紳一郎(2000).『日本語教師のためのアクション・リサーチ』凡人社.