湧田美穂さん――国立ソウル大学言語教育院専任講師/研究員
3.講師兼研究員のお仕事
今年から再び職場を移りましたので,3度目のアップデートです。
今度の職場は国立ソウル大学言語教育院で,専任講師兼研究員のお仕事を担当させていただくことになりました。
早速,今の職場やお仕事についてご紹介します!
ソウル大学には日本語学科がないので,言語教育院というのはいわゆる語学センターです。日本からもたくさんの留学生が韓国語を学びに来ていますし,英語の教育やTEPSという英語能力試験の開発にとても力を入れているところです。外国語コースは日本語のほかに,中国語,フランス語,ドイツ語,スペイン語,ロシア語のコースがあり,それぞれの言語で講座の開設,試験の開発をしています。
日本語のコースは下は「初級」から「中・上級」のクラスまであるのですが,日本語学科ではないので,初級の授業が主です。これまで日本語学科で働いてきた私にとって,「あいうえお」から教える経験はまた新鮮なので,初心に戻って毎日はさみや糊を手に教材作りに励んでいます!
また,ここでは研究員として雇われているので,授業だけではなくもちろん研究活動も仕事のひとつになります。教えながら研究との両立は難しい…きっと日本語教師でこんな葛藤を抱えている方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。私も例外ではありません。でも,逆に言えば研究で考えたり分かったりしたことをすぐに実践で試せる環境というのはとてもありがたいこと。「いい授業」をつくるためにも,研究者としての勉強や自己反省を忘れないでいたいなと思っています。
今まで韓国内で非常勤講師も含め,4つの職場を経験しましたが,ところ変わればなんとやら…雰囲気も,システムも,求められることも,本当に様々で驚くほどです。
そんなとき,思い出す言葉があります。以前お世話になった先生から頂いた言葉で,「これからの日本語教師はコンセントのように,抜き差し可能,どこにつながれてもすぐ動ける人間でなければ」というものです。私は,特にここ海外において,ことあるごとにこの言葉を思い出します。韓国にいても,どこにいてもそんな日本語教師,そんな人間を目指したいなと思います!!
2.「仁川から,ソウルの私立4年制大学へ」
みなさんこんにちは。音声研第1期修了生の湧田美穂と申します。
修士終了後韓国に渡り,早3年半が経ちました。今年から学校を移動し,環境も変わりましたのでお便りをアップデートしたいと思います!
以前は仁川市立の短期大学で教えていましたが,今年からソウルの私立4年制大学に移りました。今の学校では,韓国では珍しく日本語のクラスが初級1・2・中級1・2・上級と5段階のレベル別に分けられています。ネイティブ講師は1人なので,全レベルのクラスを1つずつ持たせてもらっていて,目まぐるしい日々を送っています。その他「演劇セミナー」という科目も担当しているのですが,実はここで音声研での経験が役に立っています。
「演劇セミナー」という科目は,日本語学科の演劇サークルが毎年1年行っている演劇公演のための準備をサポートする授業として開設されたもので,演劇公演まで3~4ヶ月間かけて指導をするのですが・・・この授業,名前こそ違いますが,正に「発音」の授業が思う存分できるのです!(授業構成は自由なので,そのように自分がしたのですが(笑))初めはクラスで日本語の発音の特徴について学び,公演が迫ってくると1ヶ月間俳優陣の個人特訓も加わり,連日発音のトレーニングを行います。時間も忍耐も必要なので,終わるころには精根尽き果て・・・という感じなのですが,発音教育をいろいろ実践してみる場としては絶好のチャンスとも言えます。俳優は全部で10人。みんな同じ韓国語を母語とする学生ですが,一人一人発音の癖も違うし,コツをつかむまでの過程も違い,まさに十人十色!一人一人と向き合い,学生の発音をじっと聞く→瞬時に癖を分析する→その場で対処法を考える→やってみる→だめなら別の方法でやってみる→それでもだめならまたさらに別の方法でやってみる→それでもだめなら・・・(略)とこのような活動を繰り返し,ある時は挫折や伸び悩みに苦しむ学生の背中を押し,またある時は中だるみの罠にはまっている学生のお尻を叩き(本当に叩きはしませんが(笑)),膨大なエネルギーと情熱を必要とする活動ですが,音声の研究者として,教師として,そして人間として,学ぶこと盛りだくさんの宝庫です。
韓国では,学生たちの発音に対する意識も年々高まってきており,いろいろなところに発音指導のニーズが溢れています。「発音」という名の授業だけが発音教育のチャンスではありません。これからも,音声研で学んだことを生かしながら,さらに新しい発見を重ねながらがんばっていきたいと思います。
1.「今の仕事のこと,など」
みなさんこんにちは!音声研第1期修了生の湧田美穂と申します。今日は,今のお仕事のことや修士時代の勉強で役に立っていることなど,簡単にご紹介したいと思います!
今の職場と環境
卒業と同時に韓国に赴任し、韓国は仁川専門大学という2年制の大学の日本語科で日本語を教えています。今の私のポストは、「招聘外国人教授」(韓国では大学で教える教員は全て「教授」と呼ばれます。何だか恐縮してしまうのですけど…)というポジションで、今年度から私の他にももう一人吉岡研の修了生がこちらに赴任し、ネイティブ二人体制でがんばっています。
担当科目は学期によって,そして運によって(?)いろいろ変わるのですが,基本的には「会話」の授業を担当します。教科書選びからシラバスの構成まで自由にさせてもらえるので,いろいろなアイデアを試してみたい人(私もそうでした)には絶好の環境だと思います。
また,韓国は学会の数が多く,教えながら研究を続けたい人には学会発表のチャンスも多いです。最近の韓国では音声研究,音声教育に関する関心が高まっているので,学会や研究会で音声関連の発表を聞く機会も少なくありません。
音声研時代・その後役に立っていること
修士論文では「「い形容詞+ナイ」のイントネーションと表現意図」というタイトルで実験研究をしました。今の仕事では,会話の授業をはじめ,スピーチ指導,グループ勉強会など,イントネーションの問題について学生の方から積極的にアドバイスを求められることもありますし,意識的に音声指導をする必要性を感じる時があります。そのような時に,修士論文や音声実践研究で学んだ理論や実践的な指導方法が,現場でも役に立っています。音声指導は,決まった型の練習法というよりも,その時その時,学生の苦手な部分に合わせてコーディネイトしてあげる必要を感じます。そのような時に指針となるのが,修士論文研究や実践研究での分析,ディスカッションによって学んだ分析・考察の視点です。
しかし!何と言っても一番役に立っているのは,戸田先生の優しく厳しいご指導の元,鍛えられた知力と精神力!でしょうか…。これは人生を通じて役に立つといえるかもしれません!
現場で仕事をし始めると,中々まとまった時間を取って勉強ができないのが現実…。思う存分勉強できる日研の環境が…今となっては(?)恋しいです。現役の皆さん,是非是非そんな最高の環境の中で納得のいくまでがんばってください。