当研究室への進学をお考えのみなさんへ
私たちは日々、ことばを介したやりとりの中にいます。みなさんも経験されているように、なにひとつまちがえのないことばのやりとりを重ねているわけではありません。ことばがすぐに出てこなくて言いよどみ、発音に手こずり発話がとぎれ、言いまちがえて言い直す等々、さまざまなトラブルに見舞われながらもそれを挽回し、なんとかうまくやりぬいています。もちろん時には誤解も生じますが(それをも挽回する力を持ち合わせていますが)、ことばのやりとりにより互いに理解を深め、人と人とか繋がっていくともいえるでしょう。
私がこのようなやりとり(自然談話)に興味を持ったのは、「わかりやすく伝えるということは、どういうことか」という素朴な疑問がきっかけでした。「わかりやすい」というのは、「人」を介した評価ともいえますから、その内実を一義的に決めるのは難しいものです。ですが、短い単文を並べる発話が、決して「わかりやすい」ものではないといった経験を、みなさんもお持ちではないでしょうか。単文、複文、そして、その他の発話構造も含めて、統語論上の議論からは最も単純とされる単文も、実際のやりとりの中では単純とは一概にいえないということになります。先の疑問に答えを出すには、やりとりを構成する“言語”と“言語ではないもの”を丁寧に見ていかなければなりません。こうしたことばを介したやりとりを営んでいくには、どういったスキルが必要とされるのでしょうか。
ことばの使用を「スキル」とだけ称すると情報伝達上の道具的なイメージが伴い、語弊があるかもしれません。みなさんもことばからその話者に対して、ある一定のイメージを抱くといった経験をお持ちでしょう。発せられたことばは何らかのイメージを伴い、その人を形作るともいえます。では、自己のイメージ形成とことばの使用はどのように結びついているのでしょうか。そして、「○×のようなイメージ(のことばの使い手)になりたい」といった希望に、ことばの教育はどのように関わっていけるのでしょうか。
本研究室は、2024年4月にスタートしたばかりです。研究の道しるべになるようなお手本はありませんので、私の素朴な、ですが、今後も続くであろう問いをあげました。踏み出す一歩から、みなさんと一緒に研究の道づくりを大いに楽しみたいと思っています。ともに悩みながら地をふみ固め、当然のことながら、あちらこちらと迷うこともあるかも知れませんが、新たな道を作っていけたらと思います。
舩橋瑞貴
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