『母さん,ぼくは生きてます』アリー・ジャン著

以下,パンフレットより転載

  • 表紙訳:池田 香代子
  • 2004年,マガジンハウス刊(紹介ページ
  • ISBN: 4838714890

ご紹介に向けてのご挨拶

最初にお断りしておきます。この本は,決して政治的な本ではありません。むしろ,わたしたち日本人に勇気と感動,そして静謐なる呼びかけを与えてくれるやさしい本です。

2001年8月,アフガニスタンからナリタへ,未来への希望をバッグに詰めてアリ・ジャン君は来日しました。が,彼は一歩も空港外に出ることを許されず,即刻入管送りとなったのです。

アフガニスタンでは,日本は「安全で」「優秀な工業製品をつくり」「優しい国民性のある」とってもいい国,というイメージです。アリ君の母親は,タリバン勢力の迫害から身の危険が迫ったアリ君に,「おまえは日本に行って,安全なところで勉強してきなさい」と彼を送り出します。

そう,わたしたちの日本は,今も昔も戦争のないいい国なのです。

現在,アリ・ジャン君は墨田区の夜間中学で,皆勤賞を目指して日々勉強に励む毎日です。入管に収監されているアリ君を始めとするアフガニスタン人たちは,弁護士や支援者たちの尽力で,とりあえず仮釈放され,それぞれがそれぞれの夢に向かって生活をしています。が,いつ何どき,強制送還されたり再収容されたりするかは,わかりません。

本書はアリ自身のアフガニスタン時代の生活,ダリバンの迫害から逃れるための亡命事情,日本での苦しい収容所暮らし,そして仮釈放されて今日までのことをこと細かく綴った,早過ぎる「自叙伝」です。

わずか144ページの小さな本ですが,どんな本よりも重い内容だと自負しております。指折り数え切れないほどの方がたからのご協力とご賛同によって,本のカタチにまとまりました。弁護士さんたちは無料奉仕で事実関係を校正しました。聞き取り役の若松君は半年あまり休日をつぶして,アリ君の話を書きとりました。池田香代子さんはアリ君をよく知るひとりとして,監修校閲しました。島田紳助さんは自らペンを持って,熱い推薦文を寄せてくれました。

なお,アリがこの先,日本に滞在することが出来るか,強制送還されるかの裁判は本年5月開廷の予定です。

緒方貞子さん推薦

アフガニスタン支援の政府代表をつとめながら,私はアブガニスタンから日本へ保護を求めて来日する人々の扱いにつき,常々矛盾を感じておりました。また,出入国管理のあり方についても,もっと個人の人間性の尊重にもとづいた対応が必要だと考え,申し入れをしたこともありました。

アリ氏の飾り気がない記述を読み,収容のあり方について,根本的な見直しを求めると同時に,弁護団からボランティアの方々までの暖かい協力の輪に,大きな感銘を受けました。

アリ氏をめぐる好意の輪の,限りない拡大を願いつつ 緒方貞子

参考

がんばれアリジャン Ali Jane Projectのサイト