オーストラリアの言語教育政策に関する質問集

この質問集は,2003年度のテーマカレッジ,「オーストラリア研究」で,開講されている,「オーストラリアの言語教育政策」の受講生による課題として作成されたものです。トピックは,「オーストラリアの外国語教育」,「オーストラリアにおける日本語教育」,「オーストラリアの日本語教師」,「オーストラリアと移民政策」,「オーストラリアの識字教育」,「アボリジニと言語政策」の6つから構成されており,日本語教育だけでなく,オーストラリアの言語(教育)政策全般にわたる質問がまとめられています。質問内容は,適宜,レビューを加え,修正していきます。

担当教員:宮崎里司

トピック 「オーストラリアの外国語教育」(古賀・本柳)

1. オーストラリアでは外国語学習がさかんですが,一般にこれを「外国語」と言わずに別の言い方をします。なんという言い方でしょう。

答え:LOTE

解説:オーストラリアでは外国語学習のことをLOTE学習と呼び様々な言語が学習されています。

LOTE…Languages Other Than English(英語以外の外国語)を略したもので,数学や理科などと同様に一つの教科名のように使われています。

2. そもそもLOTE(Languages Other Than English)という呼び方はいつからはじまったのでしょうか?

(1) 1960年代 (2) 1970年代 (3) 1980年代 (4) 1990年代

答え:(2) 1980年代

解説:1987年に言語に関する国家政策が打ち出されました。フランス語やドイツ語などいわゆる外国語として教授されてきた言語と,国家にとって地理的・経済的に 重要な言語をあわせて英語以外の言語と総称されるようになりました。

3. 公立の小学校において,LOTEとして何語を選ぶかを決定するのは次のどれでしょうか。

(1) 校長の裁量 (2) 教師による合議 (3) 保護者による合議 (4) 地域の教育委員会による決定

答え:(1) 校長の裁量

解説:もちろん,実際には他の教師や,保護者の意見もとりいれ,その地域に必要な言語をも考えるでしょう。ですが,最終的には校長の決断になります。なお,一部の州では,州全体で一つの言語を選択している州もあります。

4. 3のようにLOTEとして何語を履修するかは各学校に任されていますが,たとえば小学校がLOTE学習の実施を決定する要因として考えられるのはどのような点でしょうか。

答え:(1) 地域の中等学校との連結 (2) 学校(評議会)全体の決定 (3) 専門教員の確保 (4) 地域で話されている言語 (5) 行政による決定 (6) 地域の学校全体の決定 (7) 地域のニーズ (8) 教員の強い熱意および教員としての技能 (9) 将来に向けての妥当性 (10) 地域の歴史的要因 など

(参考:オーストラリア初等学校校長連盟『小学校におけるLOTE教育』2002,より)

5. 4において決定されたLOTE学習の成果として小学校がめざしているのはどのような点でしょうか。

答え:(1) 文化的多様性の認識,尊重および受容 (2) 母語以外の言語の習得 (3) 全般

的な言語能力の向上 (4) 中等学校への準備 (5) 地域への貢献とLOTEを尊重する気

持ち (6) カリキュラムの統合による効果 (7) 生徒の興味,関心を増す など

(参考:3と同じ)

6. 1995年に始まった「オーストラリアの学校におけるアジア言語・文化教育に関する国家計画(NALSAS計画)では4つのアジア言語の学習が重要であるとされ,学校においてもこの4つの言語の学習が優先されました。それら4つの言語とは何でしょう。

答え:日本語,中国語,インドネシア語,韓国語

解説:オーストラリア連邦はこの計画に多額の予算を投入し,2006年の時点で全国の12年生の15%が,10年生の60%が優先言語4つのうちいずれか1つを履修しているとする達成目標を掲げました。その背景にあるのは,オーストラリア経済,特に貿易促進の戦略的手段として教育におけるアジアの言語および文化,社会の理解が重要であるという考えです。

NALSAS計画:1995年にLOTEに平行して導入されたアジア言語特別教育プログラム(NALSAS = National Asian Languages and Studies in Australian Schools) です。このプログラムでは,日本語,中国語,韓国語,インドネシア語の日本語を含む4言語が優先学習言語に指定されました。オーストラリアでは,1990年代に,主に識字教育とアジアの言語の教授に政策の重点が置かれていたのです。

7. 2000年度,日本の高等学校3年生にあたる,中等学校12年生で学習された外国語のうち,上位5言語は何でしょう。

答え:(1) 日本語 (2) フランス語 (3) 中国語 (4) ドイツ語 (5) インドネシア語

解説:オーストラリアの国全体で各言語を学習している生徒の数を正確に把握するのは難しいですが,12年生については統計が取られています。それによるとここ数年上位を占める言語はほとんど変化がありませんが,2000年にはそれまで5位だったインドネシア語がイタリア語を抜き上記のようになりました。)

(参考:教育・訓練・青少年関係省資料より)

8. 初等・中等教育課程における外国語教育の実施にあたっては3つの点が特に重視されています。そのうちの2つは,(1) 歴史的に見て重要な言語 (2) アジアの言語です。もう1つはどのような点でしょうか。

(1) 世界のどこでも旅行できるような外国語能力 (2) コミュニティーの言語 (3) サモアやトンガなど南太平洋地域の言語 (4) ラテン語やギリシャ語などの古典語

答え:(2) コミュニティーの言語

解説:歴史的に重要であっても,ラテン語やギリシャ語などはほとんど学習されていません。伝統的に学習されてきたドイツ語やフランス語などの人気が高いようです。また,上記6のNALSAS計画により4つのアジア言語が特に重視されています。コミュニティーの言語は「非英語話者に対する平等の原則」に基づき移民の言語と文化を大切にするという考えから導入されたもので,移民の数が多いイタリア語,ギリシャ語,アラビア語などが広く学習されています。学校ばかりでなく,特定のコミュニティー言語を教えるエスニック・スクールが州政府やエスニック・グループなどによって設置され,そこでも様々な言語が学習されています。ベトナム語などはコミュニティ言語として学習者が多い言語です。

9. ビクトリア州の州立学校で,最も多く教えられている英語以外の言語は次のどれでしょう。

(1) 日本語 (2) フランス語 (3) イタリア語 (4) インドネシア語

答え:(4) インドネシア語

解説:2001年の調査によると,小学校では1.インドネシア語,2.イタリア語 3日本語となっており,また中等学校では1.インドネシア語 2.フランス語 3.日本語となっています。このように,小・中等学校共に,インドネシア語が第一位です。この背景には,地理的な近さに加え,ビクトリア州の州都メルボルンにあるモナッシュ大学のSEAS(South East Asian Studies) でインドネシアに関する研究が盛んに行われていることがあります。

10. ビクトリア州のカリキュラムでは,義務教育における外国語のレベルは何段階にわけられているでしょうか。

(1) 3段階 (2) 4段階 (3) 5段階 (4) 6段階

答え:(4) 6段階

解説:ビクトリア州のカリキュラムですが,VCAA(Victorian Curriculum and Assessment Authority) というところが管轄しています。義務教育レベルのためのガイドラインは,2000年に出版されたCurriculum and Standards Framework ⅡJapanese Supplementに定められています。VCAAのホームページから閲覧できますが,レベルは1から6の6段階です。(ただし4から6については,スタンダードとパスウェイの2種があります。)各段階について,4技能(読む・聴く・話す・書く)にわけて,そのレベルを説明しています。それぞれをさらに,Curriculum Focus〈カリキュラムの焦点〉 Learning Outcomes(到達目標) Learning Outcomes and Indicator〈到達目標達成目安〉という3つの観点から細かく分析しています。義務教育においてはこのカリキュラムにしたがって,外国語教育を行っていく,というわけですね。

11 オーストラリアの,外国語教育に関する教科書制度は,つぎのうちどれでしょう。

(1) 自由教科書制度 (2) 検定教科書制度 (3) 国定教科書 (4) 州定教科書

答え:(1) 自由教科書制度

解説:オーストラリアでは決められた教科書がありません。あるのは8で登場したカリキュラムだけということです。ですから,LOTEの先生は必要に応じて教科書を買ったりもしますし,自分でワークシートを作ったりもします。全て教師の判断にゆだねられているわけですね。指導の目安として,教師用参考書があるわけではないのですから,大変そうだと思いませんか。

12 外国語学習の形態の一つにバイリンガル・プログラムというものがありますが,オーストラリアにおけるバイリンガル・プログラムというのはどういうものでしょうか。

(1) バイリンガル(2言語が使用できる)生徒だけを対象にした英才教育。

(2) バイリンガルの教師によって授業が行われるプログラム。

(3) カリキュラムの大半を目標言語で行い,学習者に自然なかたちで言語を習得させるプログラム。

(4) 教室の中で2つの外国語を混ぜて授業を行い,同時に2言語を習得させるプログラム

答え:(3)

解説:カリキュラムの中でどれくらいの割合を目標言語(オーストラリアでは英語以外の言語)で学習するかは状況により異なりますが,目標言語にふれる時間が多いことから言語習得の効果が増すという考えに基づいています。英仏2言語が使用されているカナダや移民の多いアメリカなどで多く行われてきました。オーストラリアではビクトリア州の学校などで行われています。

13 オーストラリアで最初にバイリンガル学校ができたのはいつ頃でしょうか。

(1) 1800年頃 (2) 1860年頃 (3) 1930年頃 (4) 1970年頃

答え:(2)

解説:オーストラリアで最初のバイリンガル学校ができたのは140年ほど前で,特に南オーストラリア州ではドイツ系などの移民が多く,ドイツ語やフランス語といったヨーロッパ系の言語をバイリンガル教育で教える学校が多く存在しました。そして19世紀後半には100校近くまで増えましたが,第一次世界大戦が勃発するとEnglish Only政策によりドイツ語排斥運動が起こり,1900年代のいわゆる白豪主義の時代にはバイリンガル教育が禁止されその数は激減しました。その後再びバイリンガル教育が行われるようになったのは1980年代前半の頃です。

(参考資料:財団法人 海外職業訓練協会ホームページ オーストラリア編)

14 広大なオーストラリアでは,アウトバック(Outback) などの遠隔地で学校のない地域があります。そこで,それらの地域に住む子どもたちのために外国語教育などで遠隔地教育が行われています。さて,ノーザンテリトリーで実際に行われているこの遠隔地教育の通信手段は一体何でしょうか。

(1) ラジオ (2) 無線 (3) インターネット (4) 電話

答え:(2)

解説:近年急速にインターネット社会となってきましたが,答えはインターネットではありません。最近研究開発が進んでいる,「インターネットを使うなどして,教育提供機関に行かなくても教育がうけられること」,これは遠隔教育といって,ここでいう遠隔地教育とは別のものです。遠隔地教育は,遠隔教育よりも古くから行われている,地理的制約で教育を施すところに行けない,という場合に行われる教育で,Outbackなどにおける教育手段ということです。

アウトバック(Outback) …オーストラリアで,未開拓の奥地のことをこう呼びます。海岸や都市から遠くはなれたところです。オーストラリアのノーザンテリトリー州,西オーストラリア州,南オーストラリア州など,西側に多くみられます。

15 さて,前述のノーザンテリトリーにおける無線による遠隔地教育ですが,その学校名は,通称以下のどれでしょうか?

(1) The Radio Teacher (2) The Wireless School (3) The School of the air (4) The flying teacher

答え:(3)

解説:オーストラリア最大の教室,その面積は1,300,000平方キロメートルす。

実際に教えている外国語はインドネシア語ですが,生徒たちは楽しんで学んでいるようですよ。ちなみに,(4) The flying teacher というのはうそですが,The flying doctorというのは実在します。これはヘリコプターやセスナ機で救急に対処する広大なオーストラリアならではの医療システムです。

トピック 「オーストラリアにおける日本語教育」(鈴木・渡辺)

1 海外における日本語学習者(日本語教育機関で学ぶ人)は年々増加していますが,1988年から1998年までの10年間でどれくらい増加しているでしょうか?

(1) 1.5倍 (2) 2倍 (3) 3倍 (4) 3.5倍

答え:(3)

解説:1988年では73万3802人でしたが,1998年には約3倍の210万2103人にまで増加しています。

2 2002年現在,LOTE(Languages Other Than English)計画において9優先言語(日本語,フランス語,インドネシア・マレー語,スペイン語,イタリア語,中国語,ギリシャ語,韓国語)のうち,日本語は全体の学習者の約何%を占めているでしょう?

(1) 15% (2) 30% (3) 50% (4) 70%

答え:(2)

解説:2002年に行われたLOTE調査によると,日本語は全体の学習者の34%  を占め,もっとも人気のある言語となっています。

3 1998年に行われた調査において,国別日本語学習者数の上位4ヶ国を学習者数の多い順に並べてください。

(1) オーストラリア (2) 中国 (3) 韓国 (4) 台湾

答え:一位は韓国(879,860人),二位がオーストラリア(305,763人),三位は中国(212,340人)です。四位は台湾(161,872人)です。ちなみに1998年前後の各国の人口は韓国4523万人,オーストラリア1829万人,中国12億2390万人,台湾が2191万人です。

4 オーストラリアの初等・中等教育課程で日本語を学ぶ学生がその目的として最も多く挙げるのは次のうちどれでしょう?

(1) 「日本に観光旅行するため」

 (2) 「将来の就職のため」

 (3) 「日本の文化に関する知識を得るため」

 (4) 「父母の期待に答えるため」

答え:(3)

解説:この答えからもわかるように初等・中等教育における日本語教育では楽しむことに重点が置かれています。それに対して,高等教育課程で学ぶ学生では(2) の「将来の就職のため」が最も多い答えで,学ぶ人数は少ないものの,真剣に日本語を学ぶ学生が多いことを表しています。

5 外国で日本語を教えている教師が日本語,日本語教授法,そして日本の文化や社会についてより広く,深く研修するための施設を何というか?

(1) 日本ユニセフ協会 (2) 日本語国際センター (3) 文部科学省 (4) 国際教育協会

答え:(2)

解説:国際交流基金では海外における日本語教育を支援し,さらに充実させるために1989(平成元)年7月に附属機関として日本語国際センターを設立しました。日本語教育センターでは,人材開発,教材充実,情報センターの3つをも目的に様々な事業を行っています。

6 日本語教育がオーストラリアの教育機関で初めて行われたのは何年でしょう?

 (1) 1900年 (2) 1917年 (3) 1950年 (4) 1984年

答え:(2)

解説:この年にシドニー大学でオーストラリアの教育機関における日本語教育が開始されました。ちなみに翌年1918年にはシドニー市内フォートストリート高校で日本語教育が開始されました。

7 オーストラリアの小・中学校で人気がある日本語の教科書で,実際に使われているものは次のうちどれでしょう。

 (1) ANATA (2) OBENTOO (3) SAMURAI (4) TOMODACHI

え:(2)

解説:この他にも「YOROSHIKU」,「KIMONO」,「MIRAI」,「IMA」,「ISSHONI」などがあります。

8 オーストラリアにおいて1989年に日本語の学習者が全国的に急増した現象を何というでしょう。

 (1) ダイナマイト現象 (2) 花火現象 (3) ハリケーン現象 (4) 津波現象

答え:(4)

解説:1987年に連邦議会において「LOTE(英語および英語以外の言語)に

関する政策」が承認され,LOTEにおける9優先言語のひとつとして日本語学習が奨励されました。その結果,日本語学習者が爆発的に増える「TSUNAMI」現象が起き,1998年の時点では全豪で30万人を突破しています。

9 オーストラリアで日本語を学んでいるのは主に大学生である。○か×か。

答え:×

解説:現在オーストラリアでは日本語を学ぶ学生の97%が初等・中等教育者(小学校6年間,中高一貫6年間の計12年間)で占められています。

10 オーストラリアの大学入試において,日本語は大学入試科目の選択科目として認められていない。○か×か。

答え:×

解説:オーストラリアでは大学入試において,日本語は大学入試科目の選択科目として認められています。日本語学習者の多さに比例して,他の外国語より選択者は多いです。反面,日本語が最も難しい言語ともみなされて,日本語履修者でも受験では選択を避ける傾向があります。

11 オーストラリアにおける大学入試では,日本人留学生(高校生)も日本語を受験科目として選択できる州もある。○か×か。

答え:○

解説:ただし1998年の時点で不公平さをなくす為,「ネイティブ」向け試験と「ノンネイティブ」試験とに分けることが検討されており,ヴィクトリア州では2001年からその分割実施が始まっています。

12 オーストラリアの日本語教育の場でも用いられている,習得したい外国語を媒介に理科や図工などの他の教科をマスターする教育法は,何と呼ばれているでしょうか。ちなみに日本語では「没入教育」と訳されます。

(1) アブザープション・プログラム(absorption program) (2) エングロスメント・プログラム(engrossment program) (3) インボルブメント・プログラム(involvement program) (4) イマージョン・プログラム(immersion program)

答え:(4)

解説:日本語教育でこの教育法を実施しているオーストラリアのハンティンデール小学校では,イマージョンを徹底していて,例えば子供を注意するときでも英語ではなく日本語で行い,図工で使う絵の具も「くろ」,「きいろ」といったように日本語で表記されています。

13 オーストラリアにおいて,日本語学習が最も活発な州が3つある。ひとつはニューサウスウェールズ,2つめはヴィクトリア州,もう一つの州はどこでしょう。

(1) タスマニア州 (2) 南オーストラリア州 (3) クイーンズランド州 (4) 北部準州

答え:(3)

解説:オーストラリアにおける初等・中等教育は,各州政府の所管であり,外国語教育の取組形態や規模にはそれぞれ若干の差異は見られますが,いずれにおいても日本語学習が最も活発です。これは私立学校においてもほぼ同様です。なかでも,ニューサウスウェールズ州,ヴィクトリア州,そしてクイーンズランド州が三大拠点と言われています。

14 2000年にオーストラリアのマッコーリー大学で開発された,遠隔地(オンライン)学習用の日本語教材CD-ROMは,次のうちどれでしょう。

(1) Kantaro (2) 言語郎 (3) Michio Teaches Japanese (4) Japan Album

答え:(2)

解説:(1) から(4) までの選択肢は,全て実在の教材名です。これらは,CALL(Computer-Assisted Language Learning)教材と呼ばれ,外国語教育に用いられるCD-ROMです。ちなみに(1) のKantaroは高等教育で使われる漢字の教材,(3) のMichio Teaches Japaneseは初等教育で用いられる教材,そして(4) のJapan Albumは中等教育で 用いられる教材です。

15 日本語を母語としない人の日本語能力を測定する試験として,日本語能力試験があります。年1回行われるこの試験は,国内外で多くの人が受験します。平成14年度の試験では,国内で4万8616人が受験しましたが,国外ではどのくらいの人が受験したでしょうか。ちなみに国内では19都道府県で実施され,国外では38の国と地域で実施されています。

(1) 3万人 (2) 8万人 (3) 13万人 (4) 19万人

答え:(4)

解説:国内外合わせて約24万人が受験したこの試験はAIEJ(日本国際教育協会)が主催していて,1級~4級に分かれています。1級が最高レベルです。

16 第15問で取り上げた「日本語能力試験」の問題です。挑戦してみてください。

(1) ,(2) ,(3) ,(4) から下線部に最適なものを選んで下さい。

<4級>初級レベル

アイスクリームを _____ 食べましたから おなかが いたいです。

(1) たくさん (2) だいじょうぶ (3) おいしい (4) まっすぐ

<1級>最上級レベル

人間は社会的な動物であり,特に現代の情報化社会では社会を意識しないでは生きて行けない。しかし,人が何と_____,絶対に変わらない強い意志も必要である。

(1) 言いながらも (2) 言うまじき (3) 言おうと (4) 言うまいと

答え:4級は(1) ,1級は(3) です。級別認定基準は次のようになっています。4級は「初歩的な文法・漢字(100字程度)・語彙(800語程度)を習得し,簡単な会話ができ,平易な文,または短い文章が読み書きできる能力」。1級は「高度の文法・漢字(2000字程度)・語彙(1万語程度)を習得し,社会生活をする上で必要であるとともに,大学における学習・研究の基礎としても役立つような,総合的な日本語能力」となっています。

トピック 「日本語教師」(平井・平川)

1 日本語教育能力検定試験を受験するにあたって,年齢制限があります。それでは,何歳から受験資格が与えられるでしょうか?

(外国人に日本語を教える日本語教員となるために学習している者,日本語教員として,その知識及び能力が日本語教育の専門家として必要著される水準に達しているかどうかを検定することを目的に昭和62年度から毎年一回実施されています。試験は筆記試験Ⅰ,筆記試験Ⅱ,聴解試験により行われます。)

(1) 満18歳以上 (2) 満20歳以上 (3) 満25歳以上 (4) 満30歳以上

答え:(2)

解説:この試験を受験するためには準学士を持っていなければならないからです。(短大を卒業すると20歳です。)

2 オーストラリアで正規の教員として採用されるために必要なのは以下のうちどれでしょう?

(1) 日本の四年制大学のみ卒業すること。(2) 日本の大学院を卒業すること。(3) オーストラリアに二年間留学すること。(4) オーストラリアの大学院に二年間通うこと。

答え:(4)

解説:Diploma of Education(DipEd) というコースを履修する必要があります。ただし,各州でとったものは,その州でのみ有効です。例えば,メルボルンでとったら,メルボルンで教えることはできますが,シドニーで教えることはできません。

3 Diploma of Educationは更に二つのコースに分かれています。次のうち正しいのはどれでしょうか?

(1) PrimaryとSecondary (2) HighとLow (3) ProcessとCompletion (4) BasisとExpantion

答え:(1)

解説:オーストラリアでも日本と同じように小学校の教師は色々な教科を教えるので,小学校の教師を目指す場合のPrimaryでは,例えば算数,理科,社会など数種の教科を勉強します。中高校の教師を目指す場合のSecondaryでは専門教科を2つ選ぶことになります。

4 日本語教師養成プログラムを受け,現地の小学校で日本語補助教師として働く人を派遣するインターンシッププログラムを実施している業者があります。その時業者に手配されるビザは,たいていスペシャルプログラム ビザですが,このビザを持つ人は以下のうちどれが正しいですか?

(1) 現地で正社員として働くこともできるし,アルバイトも許されている。(2) 現地でアルバイトすることは許される。(3) 現地で正社員として働くことは許される。(4) どちらも許されていない。

答え:(4)

解説:このビザには就労許可がないので,現地でアルバイトをしたいと思ってる人や,働かなければ生活できない人は,ワーキングホリデー ビザを選んだほうがよいでしょう。

5 日本語アシスタント教師プログラムに参加するには教師の経験が必要である。〇か×か。

答え:×

解説:経験は必要ないですが,事前準備は必要です。JAPEPハンドブックやガイドブック,参考文献を読み基礎知識を修得してください。また一週間の準

備研修では,教授法や実践的教師トレーニングなどで万全の準備をします。現地の教育に適応している教授法を勉強するので安心です。

6 日本語教師の雇用は,やはりネイティブである日本人が優先。○か×か?

答え:×

解説:オーストラリア人が優先です。だから正規のポストは非常に限られたもので,あっても非常勤,助手のレベルがほとんど・・という厳しい状況のようです。

7 オーストラリアの日本語教師を支援するために設立された機関はなんというでしょう?

(1) 豪州日本語教師サポートセンター (2) 国際交流基金シドニー日本語センター

(3) 日本語教師普及委員会 (4) シドニー日本語教育支援部

答え:(2)

解説1991年に設立されてから現在に至るまで,様々な活動をしてオーストラリアの日本語教育を助けています。

8 国際交流基金シドニー日本語センターの事業として,適当でないものは次のうちどれでしょう?

(1) 教材の作成 (2) 教師の研修主催やセミナーの開催 (3) 教育についての情報収集と交換 (4) 日本語能力試験の主催

答え:(4)

解説:スタッフとして運営をサポートする役割はしますが,主催はしていません。その他にも活動内容として日本語弁論大会の運営サポート,カリキュラム・教材・教授法に関するコンサルティングなどがあります。

9 日本語教師たちが研究を発表したり親睦を図ったりするために,各州に日本語教師会が設置されていますが,最も機能的に組織され活発なのは何州でしょう?

(1) ヴィクトリア州 (2) ニューサウスウェールズ州 (3) クイーンズランド州 (4) 西オーストラリア州

答え:(1)

解説:国際交流基金シドニー日本語センターとの関係も緊密で,年数回の研修会を共催したりしています。また1999年にはWeb site “Japlinx” を立ち上げ,最新教育・教材関連情報の提供,情報交換の場として多くの人に利用されています。

10 Graduate Diploma of Education がなければ現地で日本語を教えることができない。○か×か?

答え:×

解説:インターンシップやボランティアなどで,日本語教師のアシスタントとして働くことはできます。20歳以上である程度の英語能力があればだれでも可能なので,HPなどで探して是非参加してみましょう。この経験があると現地でコネができ,日本語教師として雇ってもらえる確立も上がるようです。

11 日本語アシスタントティ-チャ-プログラムに参加するためには,最低どのくらいの英語力が必要でしょうか。

(1) 英検準1級程度以上 (2) 英検2級程度以上 (3) 英検準2級程度以上 (4) 英検3級程度以上

答え:(2)

解説:ネイティブスピーカーと対等に話すことは難しいことですが,教師という仕事はコミュニケーションがとても重要なので,せめて最低限度の日常会話ができることが求められます。

12 インターンは,報酬が得られる。〇か×か?

答え:×

解説:インターンは教師として正式に雇用されているわけではないので,報酬はえられません。しかし,滞在費は,留学生が通常ホームステイする時の半額以下,滞在先から学校までの通勤費はほとんどかからないように配慮してもらっています。

13 日本語アシスタントティ-チャ-プログラムでは週どのくらい学校に行くでしょうか?

(1) 月曜日から土曜日までの6日間 (2) 月曜日から金曜日までの5日間 (3) 月,水,金の3日間 (4) 土,日の2日間

答え:(2)

解説:時間帯は通常朝9時から午後3時までです。また,授業は学校や曜日によって異なりますが,午前に2クラス,午後に2クラスくらいです。

14 日本人教師が雇用されるとき,資格のほかに,初中等の場合英語能力試験が課せられますが,この試験の難易度はオーストラリア各州共通である。○か×か?

答え:×

解説:各州によって難易度(基準)が異なりますので,当然,低いところには応募者がたくさん集まります。

15 今日の日本語教師たちが抱える問題で,当てはまらないのはどれでしょう?

(1) 給料が安い (2) 州共通のシラバスがなく,指導計画をたてることが難しい (3) 多くの学校は終身雇用制をとっていないので不安定 (4) オーストラリアでは日本語の人気がないので需要がない

答え:(4)

解説:日本語はオーストラリアで人気のある言語のうちのひとつですから(4) は間違いです。ところがその人気にもかかわらず,現在は,各州の教育予算削減により教師たちへの金銭的サポートがほとんどなっていなかったり,ガイドラインができていなかったりしている状況です。オーストラリア政府はこれからもっと日本語教師たちの補佐をするよう努めていかなければ日本語教育の発展は難しいように思います。

トピック 「オーストラリアの識字教育」(岡村・松嶋)

1 識字とはそもそも何なのでしょうか?

答え:文字の読み書きや計算など,日々の生活に欠かせない能力のこと。

2 15歳から74歳までのオーストラリア国民の英語識字率は?

(1) 80% (2) 70% (3) 60% (4) 50%

答え:(4)

解説:1996年には,15歳~74歳の国民の約半分が,日々の読み物や印刷物と葛藤している,という統計が出されました。

3 オーストラリアではどうやって英語識字率が計測されるのか?

(1) 大学のテスト (2) 国勢調査 (3) 街頭アンケート (4) 入国審査時のテスト

答え:(2)

解説:国勢調査で,印刷物や読み物における代表的な問題に答えてもらいます。例えば,Prose literacyのセクションでは,新聞や雑誌からの情報を理解できたかを計り,Document literacyでは,グラフや地図,チャートを正しく読めるかを計ります。

4.調査後には,被験者の識字能力は,レベル別に分けられる。○か×か?

答え:○

解説:レベル1は,日常生活レベルで英語が読めない,2は仕事で苦労する,など,レベルが設定されている。

5 識字率はProse scale, Document scale, Quantitative scaleの3つに分けて調査されるが,3つすべてにおいてレベル1と判定された人はオーストラリアの人口の何%にあたるか?

(1) 5% (2) 10% (3) 15% (4) 20%

答え:(3)

解説:3つすべてにおいてレベル4~5と判定された人は11%でした。

6 英語を第一言語とする人でレベル1の人は人口の何%にあたるでしょうか?

(1) 5% (2) 10% (3) 15% (4) 20%

答え:(3)

7 英語を第一言語としない人でレベル1の人は人口の何%にあたるか?

(1) 15% (2) 20% (3) 25% (4) 30%以上

答え:(4)

解説:43~48%の人がレベル1と判定されました。しかし英語での生活が円滑にできなくても母語は不自由なく使える人々がほとんどです。問6,7を見てもわかるようにここに識字率が低いと一言では表せない難しさがあるといえます。

8 65~74歳の人でレベル1~2と判定された人は何%にあたるでしょう?

(1) 45% (2) 55% (3) 65% (4) 75%

答え:(4)

解説:年齢別に見てみると15~19歳を除く45歳以下の多くがレベル4~5と判定されています。15~19歳ではまだ教育が終わっていなく社会経験が少ないためレベル4~5の人々は少ないです。

9 (英語)識字できないことに苦しみはどんなもの?

答え:日常生活には,印刷物,注意書きなど,文字で溢れているといっても過言ではないです。薬の説明書きが読めないと危険だし,病院などで自分の名前や住所が書けずに,かく必要のない恥をかいてしまう。

10 識字教室などの支援はある。○か×か?

答え:○

解説:ある。オーストラリアは世界有数の多民族社会。移民も多く住む,政府や職場にそれぞれの支援がある。

11 では,国勢調査で「レベル1」と判断された人の何%が,支援を受けているか?

(1) 10% (2) 20% (3) 30% (4) 40%

答え:(2)

解説:「レベル1」の約19%の人々が,日常生活で必要な文字の読み書きを支援してもらっている。18%の人が,ノートや手紙を読むにあたっての援助を頼み,17%の人々は,名前や文書など,書く仕事で支援を受けている。

12 統計で,「識字できない」とされた人々は,本当に全く「識字力」がないのでしょうか?。

答え:前に書いたとおり,オーストラリアには大変移民が多い。よって,移民たちのもともとの言語(第一言語)の読み書きは出来るのに,オーストラリアでの公用語(=英語)の読み書きが出来ないという理由で,「識字ができない」と統計で出る。ここで言う識字率とはあくまで英語の識字率のことです。

13 男子・女子どちらがlanguageに関して識字率が高いでしょうか?

答え:女子

解説:計算の能力に関しては男子の方が高い結果が出ています。

14 オーストラリアの識字率とほぼ同じ国はどこでしょうか?

(1) ドイツ (2) カナダ (3) ポーランド (4) スウェーデン

答え:(2)

解説:オーストラリアのレベル1 17%, レベル4~5 19%

カナダのレベル1 17%, レベル4~5 23% という結果が出ています。

15 オーストラリアの10歳ぐらいの男女別識字率について,どのスキルに最も違いが現れたでしょう?

(1) Reading (2) Writing (3) Listening (4) Hearing

答え:(2)

トピック 「オーストラリアと移民政策」(本庄・高岡)

1 オーストラリアの人口は,約1950万人ですが,そのうち移民の占める割合は約何%でしょうか?

(1) 約15% (2) 約25% (3) 約30% (4) 約35%

答え:(2)

解説:オーストラリアの人口の約25%,約487万人のひとが移民です。

ちなみに,アジア生まれの国民が,オーストラリア総人口の6パーセントを占めると推定されます。

2 1999-2000年度に,オーストラリアに入国した永住者は92,300人で,前年度より10パーセント増加。その出生国は,25パーセントがニュージーランド,10パーセントがイギリス,7パーセントが○○でした。さて○○とはどこの国でしょう?

(1) 中国 (2) 韓国 (3) 日本 (4) 台湾

答え:(1)

解説:ちなみに中国語はオーストラリアの家庭で話されている外国語のトップ5,アラビア語,中国語,ギリシャ語,イタリア語,ベトナム語のなかの一つです。

3 そのトップ5の中の一番は何語でしょう?

(1) ギリシャ語 (2) 中国語 (3) イタリア語 (4) アラビア語

答え:(3)

解説:使用率の高い順に並べると,イタリア語,ギリシャ語,中国語,アラビア語となります。

4 多文化主義で知られるオーストラリアだが,同化政策を推進した時期もある,○か×か?

答え:○

解説:オーストラリアの言語政策は以下の4つの時期に分けることができる。

第1期:受け入れて,放任した時期。1870年代の中頃まで

教育,報道,商業などの場で使う言語に制限はなかった。ドイツ語,フランス語など,英語以外の言語の使用を勧めもしなかったし,また,禁止もしなかった。

第2期:寛容ではあるが,制限をした時期。1870年代から1900年代初頭まで

教育で英語を用いることを規範とすることを法律で定めた。

第3期:拒絶した時期。1914年ころから1970年ころまで

第1次大戦以来,英語単一主義の政策を強く押し進めるようになった。この政策は移民 にも適用した。即ち,移民に同化政策を適用したのである。

第4期:受け入れて,促進さえもする時期。1970年代初頭から

同化主義から多文化主義に変わった。移民の言語を尊重するようになった。例えば,学校で教えるようになり,テレビ,ラジオの放送も始まった。

5 オーストラリアでは移民に対する英語教育の必要性から,100年以上にわたり英語教育が発達してきた。その専門性には定評がある。また,留学生獲得のための学校間の競争も激しく,その結果プログラムの質の向上をもたらしている。

そこで問題,全留学生のうちアジア・太平洋諸国の留学生の占める割合は約何パーセントか?

(1) 約30% (2) 約50% (3) 約70% (4) 約90%

答え:(4)

解説:99年の統計によると,インドネシア(約18600人),シンガポール(約16900人),香港(約16700人),マレーシア(約16400人),日本(約9700人)などからの留学生が目立つ。 その他,スイスやフランス,チェコ,ブラジルなどからの留学生も目立つ。

6 移民がオーストラリアで生活する上で英語は重要です。2000年に発表された調査報告では,入国後4,5ヶ月の移民で英語による会話が「全くできない(not at all) 」「あまりできない(not well) 」と答えた者は合わせて全移民のうちどれくらいいるでしょうか。

(1) 5% (2) 35% (3) 55% (4) 85%

答え:(2)

解説:移民・多文化・先住民問題省が2000年に行った調査によると,次のような結果が出ている。非常によくできる11% よくできる22% あまりできない25% 全くできない12%   その他30%

7 AMES(Adult Multicultural Education Services)とは,英語を母国語としない国からオーストラリアに移住した人々(難民を含む)の援助を目的とした,「第二言語としての英語 (ESL) 」学習を提供する公的なサービスですが,授業料はタダである,○か×か。

答え:○

解説:大部分のAMEPの授業は無料です。また必要であれば,託児サービスも無料で手配することができます。本プログラムは原則的に,英語を第一言語とせず,実用的な英語能力がないと認められた成人の移民(18才以上)を対象としています。

具体的には次の条件が挙げられます:

海外から最近移住した移民,または人道的理由により入国が認められた者;

1991年7月1日以降にオーストラリアに入国した者;

「gazetted visa class」を保持する一時滞在者;

1991年7月以降にオーストラリアの永住権を取得した者。

これらの条件を1つでも満たす人には,AMEPの英語クラス受講が認められます。

8 AMES(Adult Multicultural Education Services)の利用者は何人くらいいるでしょう?

(1) 約8万人 (2) 約20万人 (3) 約50万人 (4) 約70万人

答え:(1)

解説:成人移民教育はあらゆる地域のコミュニティーセンターの他にも,職場,図書館,カレッジなどの各種教育機関で実施されている。成人移民教育事業に,移民政策における支出のうちかなりの部分が費やされている。

9 ESL(English as second language)の教師の年収は,オーストラリア人の平均年収より高い,○か×か?

答え:×

解説:オーストラリア人の平均年収とほぼ一緒のようです。

ちなみに平均生涯年収は154万ドル。1ドル60円として円換算すると9,270万円となります

10 ESL教育はいつ始まったでしょう。

(1) 1945年 (2) 1960年 (3) 1975年 (4) 1990年

答え:(2)

解説:1960年に成人移民に対するESL教育が開始されました。

11 LOTE(Language Other Than English)は文字通り

英語以外の言語を認める政策ですが,認められるのは原住民の言語だけか。○か×か。

答え:×

解説:移民を含めて,すべての在住民族が使用する言語を認めています。

12 LOTEの教育施策として,各州でいくつのアジア語を必修科目に入れること

が決定されているでしょうか。

(1) 1つ (2) 2つ (3) 3つ (4) 4つ

答え:(4)

解説:各州で4つのアジア言語を必修科目として入れることが決定されています。例えばクイーンズランド州の公立小学校では,LOTEのコースで日本語学習者が1位を占めています。

13 オーストラリアの日本語教育は,通信衛星を用いることでも有名ですが,遠隔地教育はいつから始まったでしょう。

(1) 1900年代 (2) 1910年代 (3) 1920年代 (4) 1930年代

答え:(2)

解説:遠隔地教育の原型は1910年代にさかのぼります。オーストラリアのニューイングランド大学において教材を郵便で配布し,手紙往復で教育を行うといういわゆる従来型の通信教育が開始されました。

14 オーストラリアの公用語は英語ですが,移民の多いオーストラリアでは日常的に使われている言語はひとつではありません。地域で使われている言語は何種類にのぼるでしょう?

(1) 50以上 (2) 100以上 (3) 150以上 (4) 200以上

答え:(4)

解説:人口の約16パーセント(約280万人) の人たちが家では英語以外を話しています。

15 年代別で一番英語に自信がないと答えた世代はどこでしょう?

(1) 0-24歳 (2) 25-44歳 (3) 45-64歳 (4) 65歳以上

答え:(4)

解説:65歳以上の中で約40%の人たちが英語に自信がないと答えています。

トピック 「アボリジニと言語政策」(大木・山藤)

1 アボリジニという呼び名にはどんな意味があるか?

(1) 最初に白人を迎えたアボリジニの長の名前 (2) 人類の祖先 (3) 原住民 (4) 大地の神

答え:(3)

解説:アボリジニという呼び名は,『オーストラリアの原住民』と言う意味の言葉からきている。ラテン語の「アブ」と「オリジン」の「最初から」の意味を持つ言葉から派生してできました。

2 現在オーストラリアではアボリジニは総人口の何%を占めるでしょうか?

(1) 50% (2) 20% (3) 5% (4) 1.5%

答え:(4)

解説:オーストラリアの総人口のうち1.5%(26.5万人)のアボリジニ及びトレス海峡諸島人口は,クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州にそれぞれ約4分の1(7000人)でもっとも多く,西オーストラリア州・北部準州にそれぞれ7分の1(4000人)となっています。州人口比では23.7%ともっとも高いのが北部準州となっています。

3 アボリジニの言葉で“カンガルー”とはどういう意味を指すでしょうか?

(1) 「こんにちは」 (2) 「それは私の家です」 (3) 「私は知りません」 (4) 「これが槍です」

答え:(3)

解説:カンガルーという名前の由来はいくつかの説があると言われています。そのひとつにキャプテン・クックが大陸に来た時に,原住民に「あの動物は何か?」と尋ねると,「私は知らない」という意味で『カンガルー』と答えたという説があります。はっきりとはわかっていませんが,「カンガルー」がもともとアボリジニ語だったことは確かです。また「コアラ」もアボリジニの言葉です。

4 アボリジニは話し言葉と書き言葉の両方をもっていた?

答え:×

解説:アボリジニは話し言葉しかもっておらず,言語としての書き言葉はもっていませんでした。しかし,アボリジニは洞窟の壁面や岩などに神話や生活環境を表現した絵画を描いていたそうです。いわばこれが書き言葉の替わりといえなくもないでしょう。

5 アボリジニの言語も昔は250を越える言葉が存在していましたが,現在では大きく分けて何種類くらいの言語が存在するでしょうか?

(1) 26~28種類 (2) 56~58種類 (3) 106~108種類 (4) 206~208種類

答え:(1)

解説:言語自体は少なくなってもオーストラリアの地名ではアボリジニ言語を起源としたものが多いです。クージー(Coogee) ,タマラマ(Tamarama) などがそれにあたります。ちなみにアボリジニの聖地エアーズロックの正式名称は”Ululu”です。英語教育がなされた後アボリジニ英語なるものも生まれました。例“deadly”が「really good, impressive」など。

6 次のうちアボリジニの言葉から付いたオーストラリアに実際にある地名はどれでしょう?

(1) エロマンガ (2) カツアゲ (3) オニババ (4) ナンダコリャ

答え:(1)

解説:オーストラリアのクイーンズランド州南西部に位置。

人口55人。アボリジニ語で「熱い熱風の平原」という意味の言葉からついた地名。オーストラリアでの石油の宝庫。

7 次のうち実際にあったアボリジニの言葉はどれでしょう?

(1) ガダンガルル語 (2) ボンバイバイ語 (3) ドカンブルル語 (4) バ語

答え:(1)

解説:西オーストラリアの言語で1970年代に調査した時点では,話し手の数は多くても2,3人であったといわれます。現在は死滅していると思われます。このほかにもアボリジニが話していた言語はバンジャラン語,カルカトゥング語など面白い名前が多いです。

8 アボリジニ文化を保護すると同時にアボリジニ文化体験などは観光の目玉にもなっています。この動きに伴い現在非原住民系オーストラリア人や外国人にアボリジニの言語を教える言語学校もオーストラリアにはいくつかある?

答え:×

解説:アボリジニの言語は主に親子や親族同士で継承しています。もともとアボリジニには上の問題でみたように文字の文化などはなく,踊りや歌,絵によって先祖代々伝わる神話や物語,狩の方法などを伝えていくのが一般的でした。オーストラリアの初等・高等学校でも非原住民系オーストラリア人,外国人にアボリジニ語を第二言語としては教えていません。

9 アボリジニの教育を推奨する先住民教育援助計画(ABSTUDY)により教育を受ける機会が増えました。1989年の10月連邦政府は全国先住民教育政策(AEP)を施行しましたが,これによる保証の対象としてあげられなかったのは次のうちどれでしょう?

(1) アボリジニ文化学校の創設 (2) 教育サービスの機会均等 (3) 教育への参加促進 (4) 固有の歴史・文化を教育課程に導入

正解:(1) が間違い

解説:アボリジニ文化のみを専門にした学校はありません。AEPではその他に「教育関係の政策決定に先住民とトレス海峡諸島民の関与」などが保証の内容として挙げられました。先住民教育援助計画(ABSTUDY)により12年生への進学率は1979年の7,5%が,1991年には31%に上昇し,また10年生への進学率は1979年の66%が,1991年には71%になりました。

10 上記政策を受け2003年現在,アボリジニ人口の中で高校卒業する者はどの程度であるか。

(1) 1/2 (2) 1/3 (3) 1/4 (5) 1/5

答え:(2)

解説:非先住民族系オーストラリア人の高校卒業率は70%である。

11 白豪主義を掲げてきたオーストラリアが1970年代になってからアボリジニに対する言語政策を転換させました。その転換とはどういったものでしょうか?

(1) 二言語教育(バイリンガル教育)を行う (2) アボリジニの言葉だけで教育を行う (3) アボリジニ語を一切使わないで教育を行う (4) 英語だけで教育を行う

答え:(1)

解説:以前の教育は原住民の子供に英語を押し付けるものでしたが,1970年代になって,二言語教育(bilingual education) も始まりました。これは教育を英語と現地のアボリジニ語で行うもので,特に北部地域州(Northern Territory) で盛んでした。残念ながら,北部地域州政府は2000年に,二言語教育の打ち切りを宣言したそうです。

12 1998年の調査による,とオーストラリア国内の全アボリジニコミュニティの学校では約何%の生徒が上記の正規バイリンガル教育を受けているでしょうか?

(1) 10% (2) 30% (3) 40% (4) 50%

答え:(4)

解説:正規のバイリンガル教育を受けている生徒数は1998年登録者数が3783人と,これは役50%にあたります。バイリンガル教育の主な目標は以下の4つです。

A アボリジニ言語を使用することにより学業の熟達を促進する。

B 英語とアボリジニ言語の両方の識字力を発達させる。

C 算数・数学の能力を発達させる。

D 各コミュニティ指導のもとアボリジニ言語・文化を促進援助する。

13 アボリジニのバイリンガル教育において,もっとも学力がつくとされている教育方法は次のうちどれでしょう?

(1) 低学年で英語を学び,高学年になるにつれてアボリジニ言語を学んでいく。

(2) 低学年でアボリジニ言語を学び,高学年になるにつれて英語を学んでいく。

(3) 低学年のうちにアボリジニ語と英語を両方学ぶ。

(4) 高学年になってからアボリジニ語と英語を学ぶ。

答え:(2)

解説:(2) のような学習方法を「ステァケース・モデル」といいます。まず子供たちの母語であるアボリジニ語を主な教室での使用言語として,学年があがるにつれ英語の使用を増やしていく方法です。(1) は「フィフティフィフティ・モデル」といって低学年から高学年にかけて,時期を問わずに教室内使用言語を英語とアボリジニ語の半々という方法です。この結果,第二言語(英語)が教授される前に母語(アボリジニ語)による十分な言語の基礎教育を行うことは,後に第二言語を学ぶための強い認識の基礎ができるとされ,「ステァケース・モデル」のほうが学力がつくことが立証されました。しかし,最近ではほとんどの学校では「フィフティフィフティ・モデル」を使用しています。

14 アボリジニ言語への政府援助として“National Aboriginal Language Programme(NALP) ”というものがあるが1987年から1990年までの三年間にいくら援助がなされたでしょう?

(1) 50万ドル (2) 200万ドル (3) 300万ドル (4) 1000万ドル以上

答え:(3)

解説:約300万ドル以上の支援がなされています。この金額は多いように思われるかもしれませんが,方言を含む200または300のアボリジニ言語に対する援助としては決して十分とはいえないと指摘する人もいます。すでに話者が存在しないアボリジニ言語にもこのプログラムから援助金が出されているので,その援助はなされるべきではないという人もいます。

15 アボリジニ族は日本の濁り酒によく似た,白っぽく米を原料にしたお酒を好み,歓迎の意味をこめて訪問者にもてなした。

答え:×

解説:アボリジニの食文化に伝統的にアルコールは存在しない。白人たちによりもたらされた酒類が問題になっているとのこと。