宮崎里司の「プリンストン通信」 1
[2004/10/09]
1746年に創立されたプリンストンは,校舎(Nassau Hall)に這った蔦が,アイビーリーグの名の由来となったことでも知られる伝統校であるが,2001年から第19代目の女性学長が誕生するなど,変化も起きている。晩年プリンストン高等研究所に席を置いたアインシュタインをはじめとして,数学,物理学関係で異彩を放つが,他分野も含め,現在9人のノーベル賞受賞者が教鞭をとっている。
一方,教育関係では,学部生の比率が高く,大学院生を含めても7千人足らずで,MBAや法科大学院,医学といった,専門職養成の大学院がない反面,全人教育を目指し,教員と学生の率が,1:5という環境を提供している。また,プレップ(中・高一環の全寮制学校)出身者が多いことでも知られ,多くの学生が奨学金の給付を受け,キャンパス内のカレッジに入寮している。
州立大学などでは,各学期15週間でカリキュラムが組まれているが,ここでは12週間の濃密授業編成が組まれている。例えば,EASでは,現在6名の日本語教育関係教員がおり,能力ごとに5レベルが設定され,合わせて100名余りの学生が,授業の他に,インディビジュアル・セッションと呼ばれる,教員との個人面談の時間を使い,日本語学習に余念がない。加えて,日本語会話力向上のため,教員や学内の日本人留学生などと,日本語で夕食を取る,ランゲージ・テーブルという催しが毎週行われ,筆者も何人かの学生と知り合いになった。
シンガポール出身で,今夏,石川県金沢市で行われた日本語集中プログラム(PII)に参加した周寒江(シュウ・ハンジアン)さんは,お父さんもここで大学院時代を過ごし,日本語を勉強した。また,西洋哲学を専攻し,同じくPIIに参加したスコット・ウェルファー君は,将来は日本で英語を教えたり,中米ニカラグアで住宅建設のボランティア活動をした関係で,将来そうした地域で仕事もしたいという。
全体として,恵まれた環境の中で,日本語教育が行われているが,学生もしっかり期待に応えているという印象をもった。(つづく)