モナシュ通信 第4回

「南オーストラリア大学でのセミナー・国際学術交流関係者との交流」

セミナー終了後。右から,Dave,Angelaと筆者イギリスへの移動が間近に迫った5月末,オーストラリアで旧知の間柄である,David Chapmanに呼ばれ,勤務校である,南オーストラリア大学(University of South Australia: UniSA)の,Research Centre for Languages & Cultures Educationでセミナーを行った。Daveが所属する,国際関係学部(School of International Studies)のLanguages and Culture Studiesには,EFL,Sociologyの他に,French Studies, Italian Studies,それにJapanese Studies,Asian Studiesといった地域研究が揃っている。日本語学習者の数に比べ,スタッフのやりくりが大変ななか,今回のセミナーを計画してくれたDaveの株を上げるためにも,一肌脱ぎたかったというのが本音だ。

もともとDaveとは,彼がクィーンズランド州にある,Central Queensland University(CQU)に在籍していた頃からの知り合いで,99年にCQUで行われた,第11回Japanese Studies Association of Australiaの学会で企画されたパネルセッションにも,日本から遠隔参加した経緯がある。また,2001年に,日本学術振興会日豪科学協力事業によるセミナー,Japanese Language Immersion Conferenceを企画した際,準備その他で,CQU関係者との折衝役でお世話になった。日研の同僚である川上さんは,Daveとさらに長い付き合いがある。実は,サバティカルに出る前から,メルボルン滞在中に,一度アデレードに来ないかと誘われていたので,旧交を温める意味でもまたとない機会になった。モナシュで教えていた頃も含め,なぜか,南オーストラリア州の大学関係者との接触は,これまでほとんどなかったため,UniSAでのセミナーはネットワークを広げる意味でも有意義であった。

国際交流室にて,Matと当日は,Daveが担当する,日本語クラス(Japanese 3A)を見学し,学部長のGary Smith氏(School of International Studies)や,今回の招聘先である,言語文化教育センター(Research Centre for Languages and Cultures Education)のディレクター,Angela Scarino氏などと昼食を共にし,早稲田との交流や,共同研究の可能性について意見交換を行った。セミナーの後,続いて,UniSAのシティキャンパスに移動し,国際交流(Manager of International Relations)担当の,Matthew Taverner氏とも会い,学生交流,スタッフ交流について,具体的な可能性のある案件を話し合った。

総じて早稲田は,海外での知名度において悪くない部類に入る。ゆえに,相手側もそれなりに期待感を込めて対応してくれるが,響きあうだけのセンスを持ち合わせているかは,残念ながら疑念が生じる。加えて,早大生は,ある特定の国々への関心は高いが,グローバルな世界観を持ち合わせるために,それ以外の地域に,果敢に足を踏み出そうとする諸君はどれぐらいいるであろうか。

そういう管理者自身も,英語圏以外の研究機関で仕事ができるほどのアカデミック能力は持ち合わせていない。今更ながら,他の外国語も兼修すべきであったと悔やまれることがある。国際交流は,双方に温度差があったり,一方的な働きかけではうまくいかない。ましてや,大学間協定の締結書を交換しただけで,国際化が達成できたなどという感覚を持つに至っては,何をかいわんやである。やはりお互いが,同じ座標軸の中で響きあわないと徒労に帰すことが多いと感じた,Daveとの再会であった。

次回からは,最後の研究地,イギリスからの通信になる予定である。受け入れ校のオックスフォードだけでなく,いくつかの機関,地域からの報告になろうかと思うので,参与観察が楽しみである。