吉林大学外国語学院活動報告

吉林大学外国語学院日本語言文学科
春口 淳一(宮崎研究室1期生)

吉林大学へ赴任してから1年が経過しました。川口先生からいただいたお題「日々の教育活動一般」「学生との交流」「現地教師との交流」「冬の厳しさ」に基づいて,現地での活動をご紹介させていただきます。

1 日々の教育活動一般

1.1 担当科目

先学期(2月~6月末),私が担当した科目は以下の通りです。

学年授業名時間数
1年生会話2コマ×週2(2クラス)
3年生古典文法2コマ×週1(2クラス合同)
計10コマ(1コマ45分)

担当科目数は前期(昨年8月末~12月末)に比べ減りましたが,これは4年生・研究生(=大学院生)1年生の授業が無くなったためです。4年生は例年,最後の学期は卒業論文のみとなり,就職活動などに取り組みます。一方,研究生1年生は従来通年で作文・古典文法の授業(前期,春口担当)が設けられていましたが,カリキュラム編成(将来的に修士課程を3年間から2年間へ移行する予定)の都合で先学期は行われませんでした。

1.1.1 会話(1年生)

1年生は,先学期が日本人教師による初めての授業となりました。精読の授業(中国人教師担当)で導入した文型に対応する形で授業を構成しました。『みんなの日本語Ⅰ・Ⅱ』<練習C>・<会話>の他,ゲーム教材,聴解教材などを参考に自主教材を作成し,インタビュー・タスク,ロールプレイなどの練習アクティビティを頻繁に行いました。

現在抱えている問題は,発表内容の多くがモデルの模倣であり,オリジナリティが欠落していることです。来学期も継続してこの学年の会話を担当しますので,この点に留意しなければならないと考えています。

1.1.2 古典文法(3年生)

4年生(前期)もそうでしたが,モチベーションが低かったです。これをどう高めればいいのかが最大の悩みでした。根本的な解決法は未だ見つかりませんが,授業毎に1度は笑いを盛り込むことを私自身への課題としました。

授業内容については特に指定も指示もなく,一切を委ねられています(主体的に学部長へは報告し,確認をお願いしていますが)。先学期の授業については,来学期に彼ら(新4年生)が受講する『古典文学』を意識し,品詞の中でも文中での使用頻度が高い「助動詞」「助詞」を中心に授業を構成しました。

来学期は研究生を担当します。学生の中にはすでに4年生の時点で受講した者も含まれるため(2003年度前期),「助動詞」「助詞」に留まらず,敬語法まで扱おうと考えています。また百人一首を活用することで授業にゲーム性を持たせることができないか検討中です。

1.2 卒業論文

本学科では「日本文学」「日本語」「日本文化」の分野で卒業論文が執筆されます。私はこのうち「日本語」「日本文化」を希望する学生を受け持ちました。私が担当した学生(3名)の論文にはそれぞれ,中国の旧正月と日本のお正月を比較したもの,日本語の人称代名詞を扱ったもの,外来語の出自を扱ったものがありました。このうち1名は学内優秀論文に選出されると共に,大学の推薦を受けて全国優秀論文コンテスト(?…日本語での名称不明)に出場しました。

今回私が担当した学生は,いずれも就職活動と並行して論文に取り組みました。そのため北京など遠方にいることが多く,電話やメールを利用した指導が中心となりました。意思疎通の点で不便なことが多かったため,来年は早い段階で相談に来るよう学生に呼びかけようと思います。

2.学生との交流

前期末に自主的に行った授業アンケートでは,「もっと話がしたかった」など交流の少なさを学生に指摘されてしまいました。しかし後期は,学生との交流を深めることができたと自負しております。

まず週2日各3時間半のオフィス・アワーを設けました。名称はオフィス・アワーとなっていますが,実際は学生とおしゃべりする時間でした。特に先学期の開始時,日本人とのネットワークを持たなかった1年生は,日本語を使う場として活用できたと思います。

この他にも新年会,餃子パーティーなどクラス単位のイベントは数多くありました。ただし彼らと飲むと,“参加人数=一気飲みの回数”となるのがつらいところです。また2泊3日のクラス旅行(→ 遼寧省千山)に同行したことは楽しい思い出となりました。

3.現地教師との交流

3.1 吉林大学

吉林大学日本語言文学科には14名(?) の中国人教師と日本人教師2名が在籍しています。学科内の教師間の関係は非常に良好で,先学期には初の社員(?) 旅行(→ 内モンゴル)も実施されました。…羊の丸焼きと白酒で盛り上がりました。

また若手教師陣とは情報交換する機会を多く持ちました。特に1年生の精読担当講師には授業の進捗状況を尋ねることで,私自身が扱う文型を管理・選択するなど授業構築の指針としました。

3.2 長春市内の日本人教師ネットワーク

市内では吉林大学の他,東北師範大学,長春大学などの高等教育機関や長春市第11高校,長春市朝鮮族中学,長春外国語中学などの中等教育機関で日本語は教えられており,それぞれ日本人教師が在籍しています。この日本人教師間のネットワークとして長春日本語教師勉強会(ホームページ)があります。これに関して,勉強会の発足人である西谷先生の報告(西谷2003)を紹介します。

「長春市では中国人教師と日本人教師が共に月例勉強会及びメーリングリストに参加し,情報交換を活発に行っている。この日本語教師ネットワークの成功の理由は(1)勉強会事務局が充実し,参加者それぞれが主体的に関与していること,(2)日本人教師だけでなく中国人教師も能動的に勉強会に参加していること,(3)メーリングリスト,ホームページといったコンピューターネットワークが効果的に利用されていることの3点に求めることができる」

(注:ただし,西谷(2003)の記載内容は発足当初~2002年10月までを反映しており,現状に関しては検証を行う必要があるものと思われる。)

4.冬の厳しさ

冬の吉林省昨年は10月10日ごろに初雪が降りました。11月に入ると路面も凍結します。凍結したての頃は運転手が状況に馴染まないためか,道路が渋滞します。春先には一度融けた氷が一夜にして再び凍結したため普段5分の所まで2時間かかり,その結果休講にしたこともありました。

また乾燥しているため降雪量・積雪量は少ないですが,冷え込みは厳しく,マイナス25度を下回ることもあったようです(写真は12月下旬に吉林大学外国語学院の校舎を写したものです)。

引用文献

  • 西谷まり(2003).中国長春市における教師勉強会とメーリングリストの活用『日本語教育論集(国立国語研究所)』19,16-28.