学校教育の現場から――夜間中学校で学ぶ多様な生徒たち

関本保孝(東京都世田谷区立 三宿中学校 夜間学級

現在,全国8都府県に35校の夜間中学校があります(参考:リンク集)。また,都内には8校の夜間中学校があり,394名27か国の生徒が在籍しています〈2003年10月1日都夜中研調査〉

夜間中学校は社会の鏡

夜間中学校は戦後の混乱と貧しさの中で,家計を支えるため,昼間中学校にかよえない子どもたちのため,二部授業として始めたのが最初です。

現在では,かつて戦争や貧しさのため学校に通えなかった中高年の方,元不登校の若者や十代の生徒,戦前の植民地時代に来日し学校どころではなかった在日の方,そして,1972年の日中国交回復からは中国残留孤児やその家族,70年代後半からはインドシナ難民,90年代からは国際結婚や仕事のため来日した外国人やその家族,さらにアフガン難民と,時代の推移や国際化を反映し,生徒の構成も多様化してきました。

日本語学級では

私の勤務する三宿中学校夜間学級には日本語学級が併設されています。最も多いのは中国帰国孤児やその家族などです。宅急便の不在連絡票を持ってきてこれは何かとか,会社のタイムカードを押し忘れたが会社の人にどういったらいいいかとか,様々な生活上の質問がよく持ち込まれます。そんな時は日本語の授業に組み込んで教えます。非識字に近い方が多いのですが市販教材にはそんな人向けの教材はほとんどなく自主教材を作りながらゆっくり教えています。

また,この間,学齢超過という理由で区市教育委員会から昼の中学校への入学を断られ,やむなく夜間中学校に入学する十代後半の外国籍の子どもが非常に多くなっています。昼の中学校とは違って時間数や活動内容も少なく,とても残念な思いです。

近い未来の日本の教育の姿

年一度国際料理交流会を開きます。昨年度は中国,インド・バングラディシュ,タイ,ベトナム,台湾などの料理を日本人生徒もいっしょに学びながら作り楽しいひとときになりました。

また,昼の中学から来た日本人生徒が外国籍の生徒と仲良くなったり,試合に向けた若者のバレーボール練習では全校で声援を送っています。もちろん各教室,異年齢・多国籍の生徒が方を並べ教えあっています。

早稲田大学教授の宮崎里司先生は夜間中学校を見学され「近い将来の日本の教育の姿だ」と評価されましたが,こんな夜間中学校のあり様が「日本の教育」全体にいい刺激を与えて欲しいと願う昨今です。

〈プロフィール〉

関本保孝(東京・世田谷区立三宿中学校夜間学級)。夜間中学校日本語学級の教員として約26年間,日本語を教える。

以上,『日本語教育新聞』22号(平成16年7月1日号) より転載