トルコ便り「M9.0を超える力――ことば」

工藤育子

2.3月26日,ネヴシェヒル大学・日本語日本文学科,ゴンジャ先生訪問

2011年4月13日

震災に関して,何かできることがあれば,協力したいという申し出を受けました。そして,日本語教育という「ことば」の教育に携わる者同士,何かできることがあれば,互いにそれを進めていきたいという意志を確認し合いました。その際,先生が博士課程に所属しているアンカラ大学の日本語日本文学科でのエピソードを話してくださいました。

3月17日~23日,アンカラにある在トルコ日本大使館に,震災に際し,弔問記帳場が設けられたそうです。アンカラ大学では,当初は教員数名の代表者らで記帳に出かけようと考えていたところ,学生からも,自分たちも行くべきだ,ぜひ記帳に訪れたいという希望が多数あり,60人ほどの学生が足を運んでくれたそうです。

日本語の学習を通じて,日本のさまざまな現象に関心を示してくれている。この,日本の危機に対し,悲しみを共有し,その思いを届けようとしてくれている。その行為と暖かい声援に,どう感謝の気持ちを述べればよいのかと,胸に込み上げてくるものがありました。

60人の学生の名前は日本にどう伝わるのでしょう。大使館を通じて,外務省へ記帳者総数として報告されるのでしょうか。その数をわたしたちはどう理解するのでしょう。「名前を書いた」その意味は何でしょう。「ことば」として表現された結果として見えるものだけを見ても,その本当の意味はわかりません。その「ことば」を書くに至ったプロセスにこそ「ことば」の魂が宿っているのではないでしょうか。私たちはそれを知る必要があると感じています。そこにこそ「ことば」の大きなエネルギーがあると実感しました。

< その1へその3へ >