私と大学院

篠原亜紀[研究内容紹介

1.私が受験を決めた理由

私が日本語教師になったのは,今から12年ほど前のことですが,その頃は,日本語教育で大学院に進む人はあまりいませんでした。当然私にも大学院という選択肢はなく,そのまま社会に出ました。

その後,まわりの教師たちが大学院に行き始めました。修士号を持つ同僚や後輩たちが増え,私は焦りを感じ始めました。「私も大学院に行きたい」と思いましたが,「でも私には向いていないかも」「研究したいこともないし」などと,なんとなく過ごして来てしまいました。しかし,教師としてステップアップしたいという気持ちは常にありました。

大学院に行かなくてもステップアップできたかもしれません。しかし,日々の仕事に追われ,なかなか上を目指すのは難しいと感じていました。海外にいると特にそうです。私は海外での教師歴が長かったのですが,特にネイティブ教師が少ない土地では,現地教師に頼られてばかりで,同僚と切磋琢磨し合ったり,自分自身が向上したりということはありませんでした。自分がしばらくの間,教師としてまったく向上していないことに気づき,ついに大学院受験を決意しました。

2.なぜ早稲田か?

日本語教育における音声(音声教育)を学べる大学院は,調べたところ,東京近郊では早稲田のみでした。

今まで,私は教師として様々な壁に突き当たってきましたが,中でも自分ではどうにもできないと感じたのが発音指導でした。当時赴任していたロシアでも発音指導の需要は高く,実際に指導を担当していましたが,きちんと学びたい,研究したいと常に思っていました。

戸田先生の執筆された『コミュニケーションのための日本語発音レッスン』という教材をよく使用していたこともあり,早稲田を選びました。また,早稲田の「日本語教育研究センター」の授業内容にも興味を持ちました。実に様々な授業があり,発音の授業も充実していました。そこで実習をしたり,TAやボランティアとして関わることができるのはすごいことだと思いました。国外受験という制度も,早稲田を選んだ決め手の一つです。帰国せずに現地で受験ができるというのは私にとって大きなメリットでした。私は仕事を辞めず,合格できなければ再チャレンジしようという気持ちで,ロシアから受験をしました。

3.入学後に感じたこと

大学院は「先生が何でも教えてくれるところ」だと思っていましたが,入学してみるとそうではなく,「自ら学ぶところ」でした。初めは戸惑いましたが,日々考え,調べ,話し合うことで研究する力がついたと感じています。様々な背景を持つ院生たちと切磋琢磨し合えるのも喜びの一つです。

また,入学時は「自分は研究に向いていないのでは」という不安がありましたが,強い意志があれば何とかなると思います。何よりも,「ぜひこれを研究したい」という意志,熱意が必要だと思います。

金銭面では,奨学金をもらうことができ,助かっています。また,早稲田には,学会補助費(遠方の学会に出向くときの交通費や宿泊費)や,合宿補助費などがあり,活用させてもらっています。

大学院進学は私にとって大きな決意で,不安も大きかったですが,今では大学院に入って本当によかったと思っています。