第4号(2013年5月刊行)

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研究論文

外国につながる子どもの適応をどのように支えるか ―― 支援者の適応観の変容に着目して

金丸巧(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
■要旨
本稿では,筆者が行った日本語支援実践の分析を通して,外国につながる子どもの適応概念を再考し,言語教育実践を基盤とした適応支援のあり方を探究することを目的とした。分析の結果,実践の中で立ち現われた子どもの多様な生き方に気づくことで筆者の「適応観」の問い直しが起きる過程が明らかになった。そして,適応とは,子どもが「自分の多様な生き方を見つけていく過程」であり,適応支援とは,支援者と子どもの相互作用の中で形作られていくものであるということが示唆された。さらに,子どもが自分の多様な生き方を見つけていくためにも,また,支援者が子どもの多様な生き方に気づき,自分自身の「適応観」を更新し続けていくためにも,言語活動が重要な役割を果たしていることが示唆された。
■キーワード
  • 外国につながる子ども
  • 年少者日本語教育
  • 適応
  • 適応観
  • 相互作用
■Entry
金丸巧(2013).外国につながる子どもの適応をどのように支えるか―支援者の適応観の変容に着目して『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』4,1-20.http://www.gsjal.jp/childforum/journal_04.html
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複数言語環境で成長する子どもの「複数言語性」を考える ―― ある海外定住児童への「まなざし」から

中野千野(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
■要旨
本稿では,補習授業校等に通っていない,海外の複数言語環境で成長する子どもとその親に注目する。筆者が行った日本語実践を振り返り,その子どもと親,実践者がどのような「まなざし」で向き合ったのかを事例として分析し,複数言語環境で成長する子どもに対しどのような実践が提供できるのかを検討した。その結果,日本語実践は,その子どもと親,実践者のそれぞれが,自らの「複数言語性」を問い直す過程となっていた。その過程において最も重要なことは,実践者が自らの「まなざし」に〈自覚的になる〉ことであった。それが可能となる時,複数言語環境で成長する子どもたちのその先へとつながることが示唆された。
■キーワード
  • 複数言語環境
  • 「複数言語性」
  • 「まなざし」
■Entry
中野千野(2013).複数言語環境で成長する子どもの「複数言語性」を考える―ある海外定住児童への「まなざし」から『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』4,21-42.http://www.gsjal.jp/childforum/journal_04.html
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教師の年少者日本語教育実践の経験が日本語教育全体に影響を与える可能性―教師の成長との関係から

飯野令子(富山大学/金沢大学留学生センター)
■要旨
本稿は,年少者日本語教育の実践経験が,教師の他の教育実践も変化させ,それが教師の成長ともかかわることを指摘する。そのためにまず,教師の成長を捉える視点として,教師が実践するコミュニティの移動による「学習観」「実践の目的」「学習者との関係性」の意識化と検討および変化,それにもとづく教師のアイデンティティ交渉について述べる。これらの視点をもとに,本稿では5名の欧州在住の日本語教師のライフストーリーの解釈を記述し,横断的に考察する。その結果から,いずれの教師も年少者日本語教育の実践経験をきっかけに学習者の「学びへの注目」が起こり,他の教育実践にも変化を起こしていること,それはすなわち日本語教育全体に影響を与える可能性であり,それが教師の成長にもつながっていくことを述べる。
■キーワード
  • 年少者日本語教育実践
  • 日本語教師の成長
  • 「学びへの注目」
  • 学習観
  • 日本語教師のライフストーリー
■Entry
飯野令子(2013).教師の年少者日本語教育実践の経験が日本語教育全体に影響を与える可能性―教師の成長との関係から『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』4,43-65.http://www.gsjal.jp/childforum/journal_04.html
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