福永由佳(ふくなが ゆか)
2019年7月博士号取得
研究テーマ
学位論文
- 福永由佳(2019).『新たな社会をつくる「成人教育(adult education)としての日本語教育」の研究――在日パキスタン人コミュニティのことばの使用と学習のリアリティを軸として』早稲田大学大学院日本語教育研究科博士学位論文.http://hdl.handle.net/2065/00063323
研究について
私はこれまで研究活動を通して日本に暮らす外国人の方々にお会いし,彼らの貴重な体験や心を揺さぶるようなエピソードを伺う機会を得てきました。その一方で,自分たちはデータとして扱われたくない,いったい研究がなんの役に立つのか,といった批判や追求を受けることも多々ありました。このような経験を重ねるにつれ,日本語教育は単なる言語スキルの教育ではなく外国人の自己実現や国際社会のなかの日本の将来といった社会的な要請に深く結びついた分野であること,そして,研究者は常に生身の人間に対していることを忘れるべきではないと考えるようになりました。
現在取り組んでいる研究は,在日外国人の多言語使用です。現代社会は,ヒト,資本,情報が地域や国境といった境界を越えて行き来し,社会のさまざまな局面において多様性や流動性が生み出されているグローバリゼーションの時代です。しかし,日本で社会の多言語性が一般的に意識されるようになったのは最近のことであり,移民が多い欧米,アメリカ,オーストラリアに比べると,多言語使用に関する研究はまだまだ歴史が浅いと言われています。本研究では,日本に在住する外国人,特に歴史的に移民が盛んな社会から日本に移住し,日本において自営業者として,イスラーム教徒として活発な社会活動を展開しているパキスタンの人たちの多言語使用に着目します。多言語話者である彼らはどのような生活を営み,どのように複数の言語を使用しているのか,複数の使用言語に対してどのような価値づけをしているのか等を複数のデータを使いつつ明らかにしたいと考えています。そして,最終的には,さまざまな背景を持つ人たちが共生するグローバル時代における日本語教育と日本語の役割について新たな知見を提供することを目指します。