吉村悠

16期生:2008年秋入学

私はこの研究室に入る前は,一年間という短い期間ではありますが,日本語学校で非常勤講師として働いていました。正直言って一年くらいの期間この仕事をしたところで,教師として一人前という状況にはほど遠く,もういちど広く日本語教育を見直してみたいと思う気持ちもあって大学院を受験しました。それでも,その決心は自分にとってこれからの人生に大きく関わることであり,大学院に合格した後も「本当にこれで良かったのだろうか」という不安がつきまといました。しかし,10月から新しい生活を始め,一か月が経とうとする今,私はいろいろな期待が自分の中に日々生まれてくるのにワクワクしています。学費は高いし,修士を取っても給料はあまり良くないかもしれないけれども,入って良かったんじゃないかと思い始めています。

その理由の一つとして,池上摩希子研究室での学びが非常に幅広く,いろいろな考えを持った院生たちの話を毎回聞けることが大きなものとしてある,と感じます。「地域日本語教育」についてその境界を一言に示してくれる人は,この研究室に入っても周りにはいません。しかし,自分にとって「地域」とは何なんだろうということを考える材料を,地域日本語教育を専門とする人に限らず,言語教育政策や年少者日本語教育を専門とする人たちから与えてもらえるこの環境は,これまで自分にとって非常に小さな枠の中で展開されていた日本語教育の概念を簡単にぶっ壊してくれます。そして自分にとって「日本語教育」,そして「地域」とは何かということを常に問い直す姿勢を身につけさせてくれるような気がします。

今,私は「多文化共生批判」の考え方に基づいて,現状の「地域日本語教育」の見直しができればと考えています。具体的な方法や,フィールドどころか,問題意識さえ明確にできていないのですが,一人で考えるより,この研究室で揉まれ,叩かれ,考えることを選んで,今は良かったのじゃないかと思っています。