「にほんご・わせだの森」特別企画
2013年6月29日(土)ワークショップ
「タップは言葉だ!――タップと言語教育」
今回,地域と日本語教育研究会では音声や文字に依存しない表現活動について,改めて考える試みを実施しました。それが,特別イベント「タップは言葉だ!」です。タップダンスのワークショップを通して,言語に焦点化しない,しかし,「ことば」について考えることができる企画を目指しました。
- 日時: 2013年6月29日(土)15:00~16:30
- 会場: 早稲田大学22号館8階会議室
- 参加費: 300円(資料代)
- 定員: 20名(先着)
- 講師: Lily氏(Tap Dance Company Freiheit 主宰)
- チラシをダウンロード[PDF]
- 活動概要
- 参加者,講師陣の感想
- イベント終了に際して
活動概要
なぜ,タップダンスなのか?…それは,プロのタップダンサーでタップダンス教室の先生であるLily先生が,「タップは言葉です」と語ったことがきっかけです。タップを踏むことで,伝えたいことが表現できると先生はおっしゃいました。言語を用いることもタップダンスも,コミュニケーションの方法です。では,その2つのコミュニケーションの方法を学ぶことは,何が同じで何が違うのでしょうか?そこで,Lily先生を本研究会にお呼びして,参加者が音声や文字ではない「ことば」であるタップを体験することで,表現することについて考えることにしました。本研究会のメンバーおよびその周りの人たちの中には,日本語教育に関わっている人がたくさんいます。日本語教育に従事していると,「コミュニケーション」のツールとして,音声や文字による言語に力点を置きがちです。ちょっとそのへんを疑って,そして,表現教育を,教える立場ではなく学ぶ立場になって考えてみる。そんな機会,あまりないのではないでしょうか。このような考えのもと,イベントは,「わせだの森」の特別イベントとして「地域と日本語教育研究会」が企画,開催いたしました。
- 参加人数
- 参加者:25名
- 内訳
- 「わせだの森」の参加者とそのお子さん(小学生1名):9名
- 日本語教師:3名
- 大学院生:1名
- 「わせだの森」のスタッフ:7名
- 講師陣:5名
- 流れ
- 準備運動〈約5分〉
- タップ語の紹介(いわゆる「文字」⇒「単語」⇒「文章」,という流れで,ステップを組み合わせることで踊りができていく)と体験〈約20分〉
- コピーキャット(先生のステップを真似る)〈約5分〉
- グループになって感情をタップで表現,グループ内でコピーキャット〈約20分〉
- タップの歴史について動画を見ながら学ぶ〈約15分〉
- 先生による活動のまとめ〈約5分〉
参加者,講師陣の感想
6月29日,「わせだの森」のイベント,「タップは言葉だ!」に参加しました。簡単な柔軟体操から初めて,最終的にステップ(もどき)ができるようになり,自分の気持ちをタップを使って表現することができました。何もわからない中,少しずつわかること,できることが増えていく喜び。簡単でも,拙くても,自分の気持ちを表現できる楽しさ。これは,知らない言葉を学んでいくプロセスに似ているなあと,ステップを踏みながら思いました。また,学ぶ側になってみて,何より心強かったのは,先生の笑顔と「間違えてもいいんです。伝えたい気持ちが大切なんです。」という言葉でした。コミュニケーションの根本にあるのは「伝えたい気持ち」。ダンスであれ,歌であれ,言葉であれ,その部分は同じなのだと実感しました。(日本語教師)
一見,まったく関係なく見える世界(分野)でも,そこで考えていることに共通点があると,純粋に嬉しくて,そして刺激になります。「どうやって気持ちを伝えるか。伝えられるか。」
Lily先生の言葉,胸に響きました。そして何より,そのLily先生の気持ちの伝え方のうまいこと。ダンスはもちろん,表情にも,話し方にも,一つ一つまで気を配っていることがよく分かりました。多分,伝えたいものがちゃんと心の中にあるんだろうな。だから自然と,出てくるんだろうな,と思いました。そしてそして教え方の見事なこと。モデルの見せ方,そこから実際にやらせるまでのつなぎ(ポンと投げるのではなく),一つ一つ丁寧に練習させていくところなど,教壇に立つ者としても,本当にはっとさせられることばかりでした。人としても,日本語教育者としても,たくさんヒントをいただきました。(日本語教師)
日本語の説明は簡単でしたし,タップダンスの教え方も理解できました。とても気分がよくなりました。またあったら,来たいです。(日本語センターの学生)
楽しかった。タップはちょっと難しいので,いっぱい練習が必要です。でも,先生の教え方が上手で,簡単にできました。本当によかった。(「わせだの森」参加者)
コラボというものは一度自分がやっている事を俯瞰する事ができるのでとても勉強になりました。今回の言語教育も一見かけ離れたものに見えますが,言語以外でのコミュニケーション,音やリズムで伝わる情報,言語を学ぶ・教える上でのヒント,またタップへのフィードバックも含め様々な発見がありました。もちろん一番嬉しかった事は,世代,性別だけでなく国境も越えてタップを通して繋がれたこと。タップを通して様々な人と繋がる・繋げることができる事が自分の一番の幸せであり,タップへの恩返しだと思います。 ありがとうございました。(タップダンスの講師)
イベント終了に際して
最初に述べたように,日本語教育研究という分野において,タップダンスのワークショップを企画したのには理由があります。「コミュニケーション」のツールは何かと考えたとき,まず初めに思い起こすのは,音声や文字による言語ではないでしょうか。だとしたら,共通の言語がないコミュニティでは,コミュニケーションができないのでしょうか?
今回のワークショップでは,「怒っている」「楽しい」「悲しい」という感情を,タップを踏むことで表現してみました。感情は,音声や文字ではなくても相手に伝えることができます。では,音声や文字でなければ伝えられないものは何だろう?今回の企画で,参加者それぞれが,この問いを考えるきっかけになればいいなと思います。
参加者と講師陣,そして「地域と日本語教育研究会」のメンバーたちは,タップを踏みならす中で,いつしか互いに打ち解け,笑顔が輝いていました。「タップは言葉だ!」は,参加者,主催者,そして講師陣,みんなにとって,大満足の活動となりました。Lily先生をはじめ講師陣の方々,参加者のみなさん,本当にありがとうございました!