担当講義より

担当講義のシラバス(2016年度版)から抜粋して掲載しています。

コミュニケーション能力測定論――日本語教育のための言語テスト研究

本講義では,コミュニケーション能力をいかに定義し,測定するのかについて考えます。

3つのモジュールで構成します。第一モジュール(1回目~5回目)では,コミュニケーション能力が持つ複雑性を理解することを目標にして,第二言語教育におけるコミュニケーション能力の理論的・歴史的背景,さらには世界的な動向について考察します。第二モジュール(6回目~10回目)では,言語テストの多様性を理解することを目標にして,言語テストの類型的特徴について考察します。第三モジュール(11回目~14回目)では,受講者自らがテストを作成する活動を実施し,第一モジュールと第二モジュールでの学習内容を実践的に確認します。

本講義を通し,コミュニケーション能力という概念が単一の現象ではないこと,良い教育のためには,良いテストが不可欠であることを認識してもらい,受講者の教師力の向上をはかります。

この授業の重点バランス

(★の数が多い領域に重点がおかれます。)

  • 日本語  :★★★
  • 学習/教育:★★★★★★
  • 社会   :★

授業の到達目標

  1. コミュニケーション能力が持つ多面性を理解する。
  2. 言語教育評価の基礎を築く。
  3. 自らの日本語教育観の中に言語テストを適切に位置づける。

授業計画

  1. オリエンテーション: オリエンテーション(本講義の目的と概要)――本講義の目的と概要について説明します。
  2. コミュニケーション能力の歴史的変遷1――ウィトゲンシュタインから認知革命に至るまでの理論的変遷などを確認する。
  3. コミュニケーション能力の歴史的変遷2――ハイムズ以降の第二言語習得論における能力概念を整理し,バックマン&パーマーの言語テストに至る研究の流れを確認する。
  4. コミュニケーション能力の現代的解釈――CEFRや日本語スタンダードの考え方を確認する。復言語復文化における能力概念を確認する。
  5. コミュニケーション能力と言語テスト――コミュニケーション能力を具体化としての言語テストの理論と方法について確認する。
  6. 言語テストを捉える視点――言語テストの類型(到達度評価,熟達度評価など)から日本語テストのカタログ的紹介を行う。
  7. 言語テストの開発プロセス――アイテムの作成から実施と検証に至るプロセスの紹介と留意点を解説する。
  8. 言語テストの活用――言語テストの結果をどう活用し,教育に結びつけるかを考察する。
  9. 言語テストの実例1――客観テスト,BJT,JLPT,J-CAT,SPOTを取り上げ,それぞれのテストが持つ特徴を解説する。
  10. 言語テストの実例2――主観テスト,OPI,JOPTを取り上げ,それぞれのテストが持つ特徴を解説する。
  11. 言語テストを作る1――文法テスト。受講者による実践。
  12. 言語テストを作る2――語彙テスト。受講者による実践。
  13. 言語テストを実施する――CATの紹介。Google Formの活用など,テストの実施を支援するテクノロジーを紹介する。
  14. 言語テストを検証する――妥当性,信頼性の検証。
  15. 振り返りとまとめ

教科書

プリント教材

参考文献

  • 李在鎬(編)(2015).『日本語教育のための言語テストガイドブック』くろしお出版.
  • 柳瀬陽介(2006).『第二言語コミュニケーション力に関する理論的考察――英語教育内容への指針』溪水社.

成績評価方法

  • レポート50%:学期末に提出
  • 平常点50%:11回目と12回目で受講者による実践があるので,それに参加すること。

日本語教育のためのコーパス研究

近年,複数の機関で大規模な言語データベースの構築が進められており,日本語教育分野においても,コーパスは研究教育のリソースとして注目されています。これを受け,本講義ではコーパスに対するカタログ的な知識を提供するとともに,日本語教育領域における具体的な活用の事例を見ていきます。

本講義の第一モジュール(1回目~5回目)では,日本語コーパスに対するカタログ的紹介と分析手法を解説し,言語使用の観察対象としてコーパスが持つ重要性について考察します。第二モジュール(6回目~10回目)では,日本語教育での活用事例を紹介し,日本語教育研究のリソースの一つとしてコーパスが持つ意味について考察します。第三モジュール(11回目~15回目)では,受講者の研究トピックに合わせて,均衡コーパスや学習者コーパスからデータを収集し,データ分析をした上で,分析結果を報告します。

この授業の重点バランス

(★の数が多い領域に重点がおかれます。)

  • 日本語  :★★★
  • 学習/教育:★★★★★★
  • 社会   :★

授業の到達目標

  1. コーパスの類型と分析手法の特徴を学ぶ。
  2. 定量的分析モデルによる研究の基礎を築く。
  3. コンピュータによるデータ処理の基礎を学ぶ。

授業計画

  1. オリエンテーション(本講義の目的と概要)――本講義の目的と概要について説明します。
  2. コーパス研究の方法と構築――コーパス研究の基本的な流れと研究のロジックを紹介したあと,データベース構築に関する基本事項の解説。
  3. 日本語研究とコーパス――日本語コーパスの導入。日本語コーパスの類型と具体例を紹介。
  4. 言語教育とコーパス――学習者コーパスの導入。学習者のデータを集めたコーパスを紹介する。
  5. コーパスデータ分析法――コンコーダンス分析,コロケーション分析,ネットワーク分析,多変量解析に関する概要説明。
  6. コーパスと日本語教育1――類義語研究。コンコーダンス分析やコロケーション分析に基づく類義語の研究事例の紹介。
  7. コーパスと日本語教育2――学習者辞書開発。コーパスを利用した語彙表作成に関する事例紹介。
  8. コーパスと日本語教育3――教材開発・テスト開発。コーパスを利用したテスト開発や日本語の教材開発の事例紹介。
  9. コーパスと日本語教育4――読解教育とリーダビリティ研究。コーパス研究の応用事例として日本語リーダビリティ研究と読解教育への応用事例を紹介する。
  10. コーパスと日本語教育5――学習者作文コーパスの構築。自分の学習者のデータを集積し,コーパスとして活用する方法について解説する。
  11. (~15)応談――受講者と相談の上,決定:受講者の研究トピックに合わせて。

教科書

プリント教材

参考文献

  • 李在鎬,石川慎一郎,砂川有里子(2012).『日本語教育のためのコーパス調査入門』くろしお出版.

成績評価方法

レポート50%:指定されたテーマに対して適切な記述・分析がなされているかを評価します。

平常点50%:11回~14回でのタスクの達成度

日本語教育学演習II

第二言語習得に関する書籍および論文の文献講読をします。先行研究の講読を通して,修士論文を執筆するための基礎を作っていきます。批判的観点から先行研究を捉え,疑問点などを議論していきます。積極的な発言と追求を期待します。

授業の到達目標

  1. 先行研究を踏まえながら日本語教育および第二言語習得研究における研究課題を発掘すること
  2. 研究論文が持つ構造を理解すること
  3. 修士論文のタネになる視点を身に付けること

事前学習の内容

担当時のプレゼンテーション資料の準備。担当者以外の人は文献を読むこと。

授業計画

  • 第1回目:ガイダンス(進め方の説明と担当の決定)
  • 第2回目~第15回目:文献講読とディスカッション

参考文献

  • 前半の文献は第1回目の日に相談の上で決定する。
  • 後半の文献は参加者が推薦文献を1人1編ずつ持ってくる。

日本語教育学演習III

修士論文執筆に向けて調査計画の検討および調査結果,さらには分析の報告をしていただきます。研究トピックとしては,コーパスを用いた日本語教育研究,Eラーニングのデザインおよび教育効果に関する研究,文法や語彙に関わる(データ準拠の)第二言語習得研究,言語テストに関する実証的研究,コミュニケーション全般を扱った研究を歓迎します。発表者はプレゼンテーションのための資料を作成してください。積極的な発言と追求に期待します。

授業の到達目標

修士論文のためのアウトラインを作成すること。

事前学習の内容

自分の番になった時にはプレゼンテーションのための資料を作成してください。

授業計画

  • 第1回目:ガイダンス(進め方の説明と担当の決定)
  • 第2回目~第15回目:研究発表とディスカッション

参考文献

研究トピックに合わせて授業中に紹介する