外国人看護師・介護福祉士のための日本語教育実践研究会

略称:早稲田JFC研究会
Research Group on "Japanese for Foreign Careworkers/givers"

  1. 設立の背景・趣旨
  2. 候補者を取り巻く環境
  3. 活動の紹介
  4. 研究会の記録
研究会設立発起人
宮崎里司(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
研究会事務局
宮崎里司研究室 早稲田大学大学院日本語教育研究科
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-7-14
03-5286-3923(研究室直通)
e-mail: miyazaki[半角に→][←半角に]waseda.jp

1.設立の背景・趣旨

OECD諸国では,高齢化社会への対応と国内の労働力不足を補うために,外国籍の医療従事者の人数は増加の一途にあります。例えば,オーストラリアでは,外国籍の医師と看護師の比率は,それぞれ42.9%,24.8%を占め(International Migration Outlook, OECD, 2007),特にアジア出身の医療従事者が,医療・福祉システムの中核を担っています。しかしながら,今般の東南アジアとの経済連携協定(EPA)では,短期間での国家資格取得や専門分野の日本語習得などといった困難な状況がある一方で,日本人介護職員の高い離職率や,有資格者の未就業などといった問題なども看過できず,潜在的な能力を最大限に発揮させる国内雇用対策とのバランスも考慮しなければなりません。65歳以上の高齢人口と15~64歳の生産年齢人口の比率をみてみると,1960年には,1人の高齢人口に対して11.2人の生産年齢人口がいたのに対して,2005年には,現役世代3.3人になり,2055年には,1.3人というように,人口動態が劇的に変化しています(平成21年版『高齢社会白書』)。それによって,これまでに構築されてきた,国内完結型医療・福祉制度は,ケア労働の国際分業体制へと変化し,同時に,「外国人看護師・介護福祉士候補者」(以下,候補者)の待遇と人権保障を含む,受け入れ体制の整備も求められています。

今後,潜在需要が見込まれる候補者研修のあり方を,日本語習得を含む異文化適応問題や,言語教育政策的な視点から考察する必要がありますが,とりわけ,日本語教師だけではなく,日本語教育の非専門家による候補者研修のノウハウも高めることが喫緊の課題となっています。そのため,今般,「外国人看護師・介護福祉士のための日本語教育実践研究会」(Research Group on “Japanese for Foreign Care-workers/givers”:略称「JFC研究会」)を立ち上げ,日本語教育をキーワードにした,候補者の問題を,複合領域で考えることにしました。

2.候補者を取り巻く環境

介護分野における初の外国人介護士受入れが始まり,現在,2年目を迎えた,フィリピン及びインドネシアとのEPAによる候補者受け入れ事業は,2008年度から始まり,現在,インドネシアから292名(就労),フィリピンから215名(就労及び修学)の,総数約500名が日本各地の施設で研修を受けています。さらに,2010年度の候補者受け入れについては,インドネシアから最大で300名,フィリピンからは最大で383名が予定されています。

一方,EPAの他にも,フィリピンを中心とした,外国人介護ヘルパー(以下,ヘルパー)なども増えており,東京都社会福祉協議会によると,都内の特別養護老人ホームにおける外国人従事者についての調査結果(2009年度)では,約3分の1の施設で外国人が就労していることが明らかになっています。

こうした状況を反映し,候補者受入れ施設の研修担当者,生活支援者,介護職員を対象に,発起人が担当した,「外国人介護福祉士候補者担当者向け研修支援者セミナー」(2010年2月19日,主催:外国人介護従事者受入れ機関連絡会,企画・運営:公益社団法人全国老人福祉施設協議会,特定非営利活動法人日本介護支援協会)でも,関係者から,日本語教育関係者との強い連携を望む声が聞かれました。

厚生労働省も,2010年度の厚労省予算(8.7億円)に,候補者が日本語の習得を支援するために必要な経費を国が補助するため,習得費用の助成として,受け入れ施設での習得費用一人当たり年間23万5,000円以内のうち,半額を国が補助する事業を,さらに,集合研修を実施して学習方針を立て,受け入れ施設と協力して計画的に日本語習得できるように支援する事業を盛り込んでいます。

JFC研究会の活動は,看護師や介護福祉士の国家試験対策だけに限らず,看護・介護現場で,外国人従事者が,十全に役割参加するとともに,研修担当者だけではなく,患者や利用者を含めた受け入れ側の日本人も,福祉医療現場の多様化を学びとり,自らの専門領域の拡充を図る工夫を支援する活動を目指しています。そのために,日本語教育関係者や福祉医療関係者が,どのように連携しあうべきかについて,意見交換や実践活動の在り方を議論しあう場を提供するため,以上のような活動を考えています。

3.活動の紹介

  1. 候補者ならびにヘルパーを受け入れている,病院・施設の研修担当者向けの日本語教育セミナーやワークショップの企画・運営。なお,将来的には,そうしたワークショップが担当者を企画,運営する担当者の養成も視野に入れる予定。
  2. 候補者やヘルパー向けの日本語教育を担当する日本語教育関係者向けの実践ワークショップの企画・運営。
  3. 日本語教育学会の「看護と介護の日本語教育ワーキンググループ」との連携による,関連省庁への政策提言。
  4. 研修担当者や日本語教育関係者のメーリングリストの開設。
  5. 会員間の情報交換ならびに情報提供。
    • 教材・教具・教科書紹介のページ
    • 看護師国家試験のページ
    • 介護福祉士国家試験のページ
  6. 看護・介護候補者や,介護ヘルパーのための専門分野別日本語教育の基礎研究。
  7. その他,移民政策としての外国人労働者政策を,日本語教育の観点から考察し,周辺複合領域と連携する展開を模索する。

以上の趣旨に賛同し,共に活動していただける有志の方々の入会を希望します。会のお知らせなどは,今後メーリングリストで周知していく予定です。

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