タスク集『Project M』作成資料
Monitoring Learner Progress (Kristine Brown, 1999) 翻訳
Monitoring Learner Progress 翻訳について
「はじめに」でも少し触れましたが,1999年にオーストラリアで出版されたKristine Brown著のMonitoring Learner Progressの翻訳を試みることが『プロジェクトM』を作るきっかけとなりました。
Monitoring Learner Progressは主としてオーストラリアで外国人に英語を教えている教師向けに書かれたもので,学習者に自律学習を促し,学習者の習得過程をモニターする授業を作るという点で現在日本語教育に携わっている方への授業改善のヒントがあると思われます。また日本語学習者にとっても,この本に挙げられたいくつかの実践例を使い,あるいは応用することで自身の語学学習にプラスになることでしょう。
Monitoring Learner Progressは,「まえがき」のほかに5章で構成されています。
それぞれの章の初めにはそのテーマに関する問題提起がなされ,研究者の意見(WHAT RESEARCHERS sayの部分)と「研究結果」がその問題に対する解答を与えています。さらに,それらを踏まえて授業への提言(Suggestions for the classroomの部分)や「実践例」が示され,教師だけでなく学習者にとっても有益ですぐに使えそうなアイデアが提示されています。また,Suggestions for the classroomと実践例の直前にあるWHAT RESEARCHERS sayの部分はその提言や実践例に関するものですので,それらを実際に使う前に目を通しておくとさらに理解が深まるでしょう。
この本の大部分は他の本や論文からの引用です。第5章の後に「文献一覧」を載せておきましたので原書にあたられたい方は是非ご参考ください。
最後に,翻訳が分かりにくい個所があるとは思いますがご容赦ください。また,この翻訳を読者にとって読みやすくするために原書の構成を変更したことをお断りしておきます。
まえがき
学習過程のモニターとは,言語学習の過程が進むにつれて学習者がどれだけ進歩しているかを知り記録する作業をいう。この種のモニターは,「形成的評価」とも呼ばれる。これは,特に(もっともそれだけではないが),授業内容に応じて,学習者の言語が時とともにどう変化していくかに焦点を当てたものである。本書は,形成的評価に関する教室場面での問題について議論し,教師と学習者に,自分たちがどのように学習を進めているのかを知らしめる手助けになると思われる活動と教材を提案するものである。学習過程をモニターすることは,もちろんそれ自体が目的なのではない。モニターは,コースやレッスンの計画,ティーチャー・アクティビティー(教師の教授活動)やストラテジー(教授活動や学習の際に使う様々な手段),そして教材が効果的に使われているかの見極め,さらに,学習者の強みや弱みを診断するのに役立つものである。
本書はクラス分けや推薦手続き,証明のために必要なコース修了時の到達度アセスメント(すなわち,総括的評価)について論じるものではない。また,管理者や他の外部組織にとって知りたいものや,知る必要があるものについて論じるものでもない。もちろん多くの場合,形成的評価をもとに総括的評価は成されるのであるが。むしろ,本書は,学習において進歩を続けていくために,教師と学習者が知りたいこと,また知る必要のあることを論じるものである。
なぜ学習過程のモニターが必要なのか?
現在の言語教育においては,学習過程を実証することが求められている。しかしながら,短いコース期間内では指導時間が制約されるため,学習過程のモニターは,うまく行われるのが難しいのが評価の一面である。多くの教師は学習者の学習過程をインフォーマルにモニターしている一方で,教師からみた学習過程の印象をフォーマルな記録としていつも残しているとは限らず,よりフォーマルなタスクを始めようとすることもない。そうしたインフォーマルなモニターは不可欠であるが,よりフォーマルで焦点を絞ったモニターにも注意が向けられる必要がある。
結果重視のアセスメントに重きをおく現在の状況は,日々のモニターを見過ごすことにつながる。この日々のモニターが,フォーマルな言語能力アセスメントにどう係わっているかも明確ではない。
教室内における学習過程のモニターという問題に取り組む方法については,最近多くの研究がなされている。本書は,研究の結果わかったことをまとめ,教師の一助となることを目指している。これまでの研究から,5つの主要な問題が明らかにされ,それらはそれぞれ,本書の章のタイトルになっている。
WHAT RESEARCHERS say
ここで言うところの達成とは,知識や技能に関連した目標を達成することであり,それは一連の指導の流れにおける重要な部分である。
これは主として,カリキュラムのモニターおよびその改善を目的に行われ,学習者の進歩のあとをたどり,問題点を見極め学習者に自信を持たせるためのものである。
教師は以上のようなことに関心を持つ傾向があるが,日々の教育――学習過程においてそれは重要な部分を占め,また,彼らがもっとも注目する部分である(Brindley 1989:17)。
診断的評価は,語学コースにおける学習者の進歩をモニターするために使われ,次のようなことを目的としている。
- 学習者の得意な部分と苦手な部分を確認する。
- なぜ問題が生じたのかを説明する。
- 必要なときに指導,助言を加える。
この情報によって,教師はコースデザインを計画し調整することができ,学習者の習得に関して明確な情報を提供することができるようになる。
第1章 インフォーマルな観察記録をつける
インフォーマルな評価はプログラムの一部とするべきだろうか?
どうやってそれを成し遂げるのだろうか?
WHAT RESEARCHERS say
教師の多くはフォーマルかつ主として観察による評価を重視する。それが教授活動とは切り離せないと考えるからである(Brindley 1989:22)。
教師は常に評価を行っている。しかし,内容・方法・活動や学習者の習得過程に関してその後の計画を立て,多くの決定を下すための評価の価値というものが,授業を行っていくうちに失われてしまうということを教師は時として見失ってしまう。これは無理のないことである。10週または15週間のコースで,学習者の達成度やカリキュラムの内容を正確に把握することはとても難しい。印象に基づいたデータを思い起こすことは絶対に不可能である(Lewis 1989:63)。
教室内での学習者のインターアクションを観察する時間を設けることは,学習者と学習者の行動をより活発にし,教室が教師中心の状態から離れることになる。これは,教室内での教師主導の活動をより少なくし,教師の姿勢も学習者がお互いに情報を提供しあって協働かつ生産的に作業をする能力を重視する方向へと変わっていく(Lewis 1989:70)。
教師がいかなるフォーマルな(記述式の)評価もできない要因のひとつとして,時間的制約を挙げている回答が多くあった(Brindley 1989:24)。
研究結果
- 通常の授業の中で教師たちは,学習者の習得の度合いをかなりの割合でインフォーマルにモニターしている。
- 情報を失わないために,インフォーマルな観察のデータをフォーマルな(筆記した)記録に変換することが重要である。
- 定期的に(学習の)進歩を文書化することは,様々な方向に波及効果をもたらす。学習者の話しことば又は書きことばにおける得意な面と不得意な面が分析できたり,言語学習の特徴が明らかになるようなタスクが作り出されたりする。
- 教師は,インフォーマルな記録をとるための,シンプルで効率がよく,実際に使えるような方法を考える必要がある。
WHAT RESEARCHERS say
次のページにある「生徒の行動観察記録シート」はきわめて基本的な表であり,教師はこの流れで観察を行うことで,生徒をクラス全体として,および個人として把握することができる。(Lewis 1989:70)
教師は,週に2~3人の生徒に焦点を当てて,この適切な表題のもとに選んだ生徒の行動をメモするのだが,教師の多くは,最初は,この作業が難しいと報告している。それはコメントの内容と,特定の生徒の行動についての観察・メモを忘れないようにすることが難しいからである。しかし,ストラテジーによってどれだけ生徒のことが分かったかに気づくと,教師は生徒の行動に敏感になり,観察をメモすることが習慣となるのである(Lewis 1989:70)。
診断的評価はさまざまな形をとり,以下のことを含む。
- チェックリストにそった教師による観察
- 言語の特徴やスキル,教授法を考慮したタスク
- 文章全体に焦点をあてた枠組み的なアセスメントタスク
- 学習者のリスニング,スピーキング,リーディング,ライティング能力の分析
評価結果をきちんと反映させる技術を養い,セルフアセスメントをじっくり見直すためにも,可能なかぎり学習者自身を評価過程に加えるべきである。これらの手法は,学習者が教室内外における学習アセスメントの役割を理解するのに役立つ(Feez 1998:55-6) 。
Suggestions for the classroom
生徒の行動の観察を日々記録するために,下の表(Lewis 1989:71より)のような単純なフォーマット(構成)を考えなさい。
週 | 口頭表現能力 | 読み書きの能力 | コミュニケーション能力 | その他 | コメント |
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一度にすべての生徒の進度を記録しようとするのはやめなさい。クラスをいくつかのグループに分け,1つのグループにつき数日おきに観察結果を記録しなさい。
学習過程を記録する共通のフォーマットを,作りなさい。
モニター活動を進める際には時間の効率的な使い方を中心とした,以下のヒントを参考にするとよい。これらは,大がかりなアセスメント・プロジェクトに関わった教師による討論をもとにしたものである(Arnold and Lomas 1991:17)。
- アセスメント活動には授業時間の10~20%を確保するようにし,それには教師と学習者の双方によって分析され,議論されると思われる観察結果を含めなさい。
- アセスメントの項目を絞りなさい。役に立たない項目や使われないもの,教師の時間や授業時間を無駄にするようなものも除外しなさい。
- アセスメント方法の工夫や,アセスメントの結果の照合は可能な限り学習者とともに行い,アセスメントを実用的なレベルに保ちなさい。
アセスメントの結果は,その後の授業やグループアクティビティ,ディスカッション,学習者とのプランニングセッション等の場で活用し,その効果を最大限に生かしなさい。
コース目的に係わる(クラス内での)継続的アセスメント結果を,コース終了時のアセスメントにも反映させなさい。
クラスをひとつの情報源とし,授業時間内に記録や評価を終わらせる方法を作りなさい。
さまざまなアセスメント方法を試行し,しかるべき目的のための適正な方法を見つけるために問題点を同僚と話し合い,バラエティにとんだ方法や手法を築きなさい。
Brindleyの1989年の著書,特に第4章を読みなさい。
第2章 ポートフォリオをファイル化する
ポートフォリオの目的は何か?
教師が学習者の習得過程を評価する際にポートフォリオはいかに役立つか?
WHAT RESEARCHERS say
学習者と教師が協働で評価活動に参加したときに最大の効果が生まれる。(Valencia 1990:338)
学習者が教師と協働で自分自身の言語運用能力を評価できると,説得力のある結果が得られることがある。協働で行うためには様々な評価方法が可能である。学習者が自ら評価することもできる。たとえば,学習者は学習に対する態度について教師と話し合い,テストの結果に基づいた両者の評価結果に合意点を見いだすことができるし,また,教師の助言を得ながら自己の学習を振り返り評価を行うこともできる。(Carroll 1995:104)
研究結果
ポートフォリオは学習者の習得の様子を明らかにする系統的な資料である。学習者がどのような集団であるかによってその内容は異なるが,以下のような様々な種類の学習の指標となるものが含まれているのが理想である(Valencia 1990:339)。
- 教師,あるいは学習者によって集められた学習者の作品集
- 教師による観察メモ
- 学習者自身の定期的な自己評価
- 学習者と教師が共同で実施した習得過程の記録メモ
ポートフォリオは学習過程の評価を形に表す貴重な手段である。その理由はポートフォリオによって以下のことが行われるからである。
- 評価というのは「教育-学習プロセス」において不可欠なものであることを学習者に明示する。
- 学習の経過と結果の両方に焦点を置いている。
- 教師と学習者の両者で習得過程をモニターする。
- 教師にも学習者にも役立つ方法で技能の向上を明らかにする。
ポートフォリオそのものが最終目的ではない。学習者が現在の到達レベルから最終目標に向かって習得を続けている中で,その習得を助けるためにあなたに何ができ,また何をすべきかを明らかにするためにポートフォリオは使用されるべきである。
WHAT RESEARCHERS say
何を評価するかは,カリキュラムおよび指導の上で何を優先するべきかによって決定されねばならないものなので,評価の流れは指導の重要な目標を決定づける。目標が明確でないとポートフォリオはピントのずれた何の役にもたたない資料に過ぎなくなる可能性があるし,もっと悪くすると,それぞれが何の関連性も持たないスキルテストの寄せ集めに過ぎなくなってしまう。ポートフォリオの中身を次の2つに分けて構成するのが有効である。(a)実際の根拠となるもの,あるいは生のデータ,(b)情報を統合するのに助けとなる概略シート,あるいは構成の骨組み。(Valencia 1990:339)
ポートフォリオは学習課程において学習者が書き残したものの収録である。しばしば学習者はポートフォリオに含める文書を自身で選択することができ,イントロダクションを書くことも求められる。その中で学習者は自分がその文書を選んだ理由や,その論理的証拠を述べることになる。これ以外の項目は学習者がどんな文書をポートフォリオに加えるべきかを明確にする-たとえば初版の原稿であったり,すべての原稿であったり,教室での作文や日記であったりする。
Suggestions for the classroom
評価のためのポートフォリオをファイルしはじめる前に,これからその中にファイルされていく資料をどう系統づけ,またどう選択したらよいか考えなさい。
学習者の習得過程をモニターするための以下の項目を吟味し,あなたのクラスの学習者のポートフォリオに加えるのに相応しいものを見つけなさい。
- 課題について生徒がどのように言語を運用しているかの観察。
- 教室でのやりとりや学習者の態度の観察。
- 普段の会話の記録。
- 熟達度を記録するための技能のチェックリスト。
- 分析的な評価方法。
- 生徒のセルフアセスメントの方法。たとえば報告書など。
- 学習過程または終了後のディスカッションあるいはインタビュー。
- 教授前および教授後のアンケートと報告書。
- オーディオおよびビデオまたはその一方を用いたシミュレーション活動や実際の活動の記録。
- 学習者から学習者への書くことによるフィードバック。(学習者同士の評価)
- 書く作業の例。
- 教師宛の定期的な手紙。
- 日々の出来事や学習の振り返りを記録する日記や日誌。
- 授業,活動,課題などの前後に使う評価用チェックリスト。
ポートフォリオに関するValencia 1990,Ljungdahl 1997,van Kraayenood and Paris 1992を読みなさい。
第3章 評価基準を定める
習得過程をモニターする際に,何を評価するかをどうやって決定すればよいか。
WHAT RESEARCHERS say
ある種のニーズ調査から得られた,望ましい学習成果というもの明確にしておかないと,何が達成できたかを確定するのは非常に難しい(不可能だと言う人もいる)。(Blindley 1991:5)
基準を参考にするということに関しては多くの課題がある。まず基準にのっとった評価のもとになる基準をどう定義するかという問題。つぎに学習者たちに何が「できる」のかということをどうやって示すかという実際的な問題である。(Brindley 1991:6)
「言語能力に基づいた発話および作文力の証明」を行うにあたって,多くの教師は言語能力が存在するということがインフォーマルな評価に有益な結果が得られることを知り,そのような評価がより客観的になったと報告している。
「直観だけを用いるよりもむしろ学習者の行動の中に見るべきものがあることがわかった。」
「インフォーマルな評価は基準を繰り返し検討することによって容易になる。」
「インフォーマルな評価はより不変かつ客観的になった。」(Hogan and Jones 1992:6)
研究結果
オーストラリアで現在行われている多くのESL(第二言語としての英語)プログラムでは,学習者の習得の様子は‘norm(規範)’を参考にするのではなく,‘criterion(基準)’を参考にするのである。すなわち,学習者の習得の度合いは他の学習者の達成状況との比較によって測られるのではなく,言語をどれだけ習得したかを計る基準に基づいて測定されるのである。
基準にのっとった方式を使うと,学習者は決められた基準に照らし合わせて自分は何ができて何ができないのかが明白にわかる。
習得の度合いをモニターするための基準をつくる上でまずすべきことは,学習者がコースの終了時点でなにができるようになっているべきかを定めることである。これは多くの場合明確なコースの目的や身につけるべき言語能力の評価によって決められる。
現在行われているモニターの基準を教師が作る方法は学習者のグループや状況によって大きく異なる。基準は幅広かったり(全般的な幅広い技能に関連したもの),具体的なもの(個々の言語使用の状況に関連したもの)であったりする。言語に関係することだけのものもあれば,自信といったような言語以外の側面に関係するようなこともありうる。
言語能力がコースに組み込まれている場合は,基準と対比して習得の度合いを測るプロセスはより簡単になる。
WHAT RESEARCHERS say
チェックリストを用いて構造的に行う観察は,学習者の習得の度合いを統一した書式に記録できるという利点がある。学習コースの終わりの段階で言語能力がどれくらい達成できているかを記録する上でこれはきわめて貴重な資料となるであろう。(Cornish 1992:13)
クラスの特徴をチェックするリストが改良されるにともなって,チェックリストと対比させながら書く活動を評価することが,教育――学習という流れのあらゆる面において不可欠であり,継続的におこなわれる必要がある。ことばが抜け落ちたり,ことばを誤って使用したりすることがクラスの仲間同士のディスカッションで明らかになるだろう。そのような準備をしておくと,テストによるクラスのフォーマルな評価などは決して難しいものではなくなる。言語運用がある基準に満たない場合,フィードバックがはっきりとしたものになり,習得につながることになる。(McGregor 1994:12)
話す能力の低い生徒が持っていると思われる言語技能の領域を正確に言い表すことにはこれまでほとんど注意が払われてこなかった。たとえば,レベルの低い生徒が受け取る語彙というのは,熟達度の指標として,彼らが発する語彙の種類と関連がある。(Wakeland 1989:51)
Suggestions for the classroom
チェックリストの項目に選んだ評価基準を,学習者の言語使用の観察の際に使ってみなさい。
教えるという活動と同じように,テストという活動をあなたの一連の教授の流れのなかに組み入れなさい。
評価基準を作成するときには習得過程の様子がひとつひとつ見えるようにしなさい。これは特に初心者のグループには重要なことである。基準が広範囲にわたると,誰も達成できないようなものになってしまい,役に立たないであろう。
すでに書物などで公表されている基準を自分の目的および状況に合わせて使用しなさい。
明白な評価基準がすでに作られているならば(たとえば,言語能力中心のコースにおける言語運用能力基準など),それらを現在学習が行われているクラスの基準を作成するための基本として利用しなさい。一般的に教材や教授活動と密接に結びついたそれぞれの達成小目標がその中に包括されている。
もし可能かつあなたが適当であると思うならば,基準を決定するに当たって教師以外のネイティブスピーカーに相談してみなさい。
もし可能かつ適当と思われるなら,習得過程を評価するにあたってクラス全員を参加させてみなさい。
これまで教師によって改良されてきた評価例を見つけなさい(例 Brindley 1989)。
学習者が読んだり書いたりする上で何が得意で何が不得意かを診断する際の詳細な流れを示す評価項目一式を利用しなさい。
WHAT RESEARCHERS say
私は様々な評価用紙をできるだけ使い,学習者を積極的に学習の流れに参加させ,また自律学習をうながすようにした。時間が経ち学習者の自信が強まるにつれて,私は評価方法を狭めていった。たとえばクラスの全体評価といったような仲間の助けを最も得やすい方法から,仲間による評価,自己評価,そして最後には手助けのまったくない方法(つまり教師による正規の評価)といったようにである。同時に私は活動の中心を,あらゆる言語運用の基準を包括するまで広げていった。(Stewart 1995:11)
共同でおこなう評価を教師は探求するべきである。特にこれはコミュニケーションがうまく行くための基本であり,個々の人間が集まれば常に他の誰かの言語能力を評価することになり,言語学習教室以外の場ではより厳しい評価が行われる。職場内もしくは地域内でさえ,雇用者,事務職員,他の教師や他の学習者などはみな学習者の言語能力を評価することができ,また実際に行っているのである。(Manidis and Prescott 1994:58)
このコースにおいて考えだされた評価基準は習得過程の評価のための比較的フォーマルな評価方法の例(次ページ以降「実践例」参照)であるが,これはさまざまなコースに適用することができる。我々は,この種の基準にのっとった評価というものは習得過程における学習目標を明確にし,分析する上で教師,生徒双方にとって有益であることを示してきた。(Mah 1989:48)
出席率の高いクラスでは,そしてとくに学期の初めには,オーラスコミュニケーションの領域では何が必要かということにいつも注意を払えるとはかぎらない。調査の結果(次ページ以降「実践例」参照)から生徒のニーズのいくつかが浮き彫りにされた。(Moodie 1991:19)
授業と習得過程の評価を密接にリンクさせることは,学生の興味のレベルを高く保たせるという顕著な結果をもたらした。学生たちは特に仲間同士の評価の機会を楽しみ,無記名にしておこうという私の思惑を覆した。彼らはとても熱心に,お互いの言語能力の長所と弱点(ほとんどは弱点)をあばき,「犠牲者」となることを気にも留めないようすであった。(Stewart 1995:14)
実践例
以下に示した例をあなた自身の教室場面に適用してみなさい。表は段階順に示されている。
段階 | . | 学習項目 | 活動 | 評価 |
---|---|---|---|---|
1 | 話すこと | 過去時制 | *週末の活動について話し合う *教師が生徒の発言を書き取る *モデルの提示 |
インフォーマル |
2 | 書くこと話すこと | 過去時制の連続 | *生徒が週末の複数の活動について書く。 *2つの文で提示する *後で参照可能なように例文として残す |
インフォーマル 教室評価 言語運用能力評価基準に照らし合わせて分析したそれぞれの生徒の文章の全クラス分のOHT |
3 | 書くこと話すこと | 過去時制の連続時を示す語句本文のまとまり | *生徒が週末の活動について書く *過去の時を示す語句を含むモデルの提示 *2段落以上のまとまりのある本文を書くようにもとめる。 *何が「合格」の基準になるのかについて話し合う。 |
インフォーマル,学習者同士の評価 グループワーク 各グループでそれぞれの生徒の作文を評価基準に照らし合わせて評価,検証合格か不合格か,その理由は。 生徒は評価シートを使用 |
4 | 書くこと話すこと | 一時的な過去連続性を表す語句接続的なつながり本文の結合 | *生徒は週末,あるいは過去のほかのときのできごとについて書く *モデルの提示 *トピックの拡大 |
インフォーマル,学習者同士の評価 グループワーク 生徒はペアーになりお互いの作品を評価基準に照らしあわせて評価,検証しOHTを使ってクラスに発表 合格か不合格か |
5 | 書くこと | 言語運用能力全体の評価 | *生徒は自分で過去の出来事を選んで書く。 *使えそうなトピックの例 :私の結婚式,学生生活,子どものころ,オーストラリアへの旅行,オーストラリアでの最初の週,この前の英語のクラス,祭りなど |
自己評価・インタビュー 生徒は達成基準に照らし合わせて自分の作文を検証し個々に教師に報告する 合格か不合格か,その理由は。 教師によるフィードバック |
6 | 書くこと | 言語運用能力全体の評価 | *生徒は第2段階で書いた作文と第5段階で書いた作文を比較する 教室活動に結びついた職場への実地見学 郵便局 |
自己評価 生徒は言語運用能力基準に基づいて作文を検証 |
7 | 書くこと | 言語運用能力全体の評価 | *生徒は実地見学の報告を書く *参考例は与えない |
フォーマルな評価 総括的 合格か不合格か。 教師によって行われる評価 |
Mah (1989)は,学習者やカウンセラーと相談してオフィススキルコースのための以下のような評価基準を打ち立てた。これはオフィススキルコースのための電話応対スキルの分析用である。
1 | この人はコミュニケーションがあまり上手ではない | 0 1 2 3 4 5 | この人はコミュニケーションが大変上手である。 |
2 | この人の話はあまり良くわからない | 0 1 2 3 4 5 | この人の話はとてもよくわかる。 |
3 | この人の電話応対マナーはあまり礼儀正しくない | 0 1 2 3 4 5 | この人の電話応対マナーは大変礼儀正しい。 |
4 | この人はオフィスで使うのにふさわしい会話形式を使っていない | 0 1 2 3 4 5 | この人はオフィスで使うのにふさわしい会話形式をきちんとつかっている |
5 | この人は必要なことを十分話していない | 0 1 2 3 4 5 | この人は必要なことを十分に話した |
6 | この人は必要以上に話すぎた。 | 0 1 2 3 4 5 | この人の話の長さは適切であった。 |
7 | この人はこの業務に必要な肝心な情報をうまく伝えられていない。 | 0 1 2 3 4 5 | この人はこの業務にとって肝心な情報をきちんと伝えられている。 |
8 | この人は会話を上手に締めくくれていない | 0 1 2 3 4 5 | この人はこの会話をきちんと締めくくれた。 |
Moodie (1991)は彼女が勤めるセンターの成人クラスで学習者が地元の高校生と会話をする機会をもうけた。彼女は成人学習者の習得度合いを測るための評価表を作った。そして学習者自身,教師達,高校生のパートナーによって評価が行われた。この調査の狙いは教師による評価,ネイティブスピーカーによる評価そして学習者自身による評価を比べ,現行のコースデザインに役立つデータを提供し,そして学習者に習得度合いに関するフィードバックを行うことだった。そうすることにより学習者は学習努力目標をより絞り込めるのである。調査は以下のものについておこなわれた。
- 聞き手への印象
- 明確さ
- メッセージの受け方
- 自信
- 質問の仕方
- 質問への答え方
- 会話の続け方
- 会話の中断のしかた
- 中断した発話の再開の仕方
- 会話の終わらせ方
以下の例は習得過程の量的な評価が要求される前高等教育段階での書き言葉の評価を行うにあたって,「基準に基づいた評価」がK. Brown (1995)によってどのように使用されたかを示すものである。
ASPECT | MARK / 5 | COMMENTS |
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合計/20 | . | . |
第4章 外国語学習者の非言語部分(言語以外の部分)での成果をモニターする
非言語部分での成果とはなにか,そしてなぜこの分野における進歩が評価分析されるべきなのか。
WHAT RESEARCHERS say
ニューサウスウェールズ州成人移民英語教育局の72人の教師が行った1992年の調査では,次のような一致点が明示された。それは,非言語面での成果は,言語学習過程全体の成果のなかの大きな割合を占めている,というものだった。しかしながら,成人教育においてはこの非言語面の成果を記録するための形式がほとんどないのが現状である。もしそれ自体が大きな成果として現れなければ,その成果とは何のコメントもされずに曲解されがちになってしまう。(Jackson 1993:1-2)
診断的評価によって,生徒ができないことよりも生徒ができることに基盤をおいた小さく,かつ現実に即した達成中心の目標を設定することが可能になる。(Jackson 1993:23-24)
自分に対する自信が増すと共に,学習者は自分の生活をよりコントロールするようになり,彼らを取り巻く地域社会ともうまくやり取りできるようになる。しかしながらこれらの達成度は生徒の習熟度合いを示すために使われているASLPR (Australian Second Language Proficiency Rating) の基準にはうまく取り込まれていない。読み書きに対する生徒達のASLPRの結果をただ単にみても,生徒がどれだけ進歩したかを完全なかたちでつかむことはできない。(Huntington 1992:30)
研究結果
外国語学習者の言語学習面における成果と同様に,言語以外の面から見た成果を分析することは重要である。
教師が「非言語部分での成果」 という用語を使うのは以下のものに関連した成果を言及するときである。
- 新しい住環境,学習環境のもとでの社会的,心理的,そして感情面でのサポート
- 自信
- 動機づけ
- 文化に対する理解
- オーストラリアの地域社会についての知識
- 学習方法の学習
- 学習目標の明確化
- 就職への取り組み,さらに進んだ学習,地域社会での生活
学習の非言語面についての仮説を立てるよりはむしろ我々は慎重な分析評価を実行すべきである。
ことばが上達していくその一歩一歩を我々が認識するのと同じように,学習者の非言語部分での成果における上達の一歩一歩をも認識することが大事である。学習者に対する速やかなフィードバックと進歩の証を示していくことがこのプロセスのきわめて重要な部分となる。
WHAT RESEARCHERS say
一般に教師がもっとも注目する個人的様相はどのように学習者の自信が増したかという点である。おそらく我々は学習者の行動面にどんな変化がおこったか(例えば前回調べたときに比べてなど)を,以下の質問を参考にして調べて述べる必要があるだろう。(Nunan and Burton 1989c:40)
- 比較的もの静かな学習者が何らかの申し出をするようになったか。(どのくらいの頻度で?)
- 学習者は皆どのように感じているのか。どうしてそれがわかるか。
- 学習者は教室の中をのびのびと動き回るようになったか。
- 学習者はまだ一人ですべてのことをしているか。
- 学習者はようやく今週だれかに話しかけたか。
- 今日,今週,何回学習者はこの授業で発言したか。
- どのくらいすばやく学習者は質問や意見に答えているか。
- 今週学習者は何回位ペアーワークに参加したか。
- 学習者はいらいらすることなく自力で練習問題をやりとげたか。
- 学習者は何回人の助けを借りずに答えを言えただろうか。
- 学習者は今週何回クラスに来たか。
- 学習者はどのくらいの頻度で現在なにかあたらしいことに挑戦しているか。
Suggestions for the classroom
クラスに適した「自信」に関するチェックリストを作っていくための出発点として上の質問を使いなさい。
「引用文献」に挙げられている2冊のJacksonのテキストを読みなさい。そこには非言語部分での成果をあなたの授業や学習過程の評価にどのように組み入れていくかについての実際的な提案が書かれている。
第5章 セルフアセスメント
どうして学習者に自分の学習過程をモニターさせなければならないのか。
どうすれば,セルフアセスメントを促進させることができるだろうか。
WHAT RESEARCHERS say
セルフアセスメントに客観性を持たせなければ,その様々な目的は混乱し,あいまいなものとなってしまう。セルフアセスメントの提唱者の中で,それが第三者の評価または認証の目的のための適切な手段であると考えている人はほぼいない。(Rolfe 1990:164)
私は言語習得の基準というのは,学習者の第一言語習得と同じ形で存在していると思う。第一言語と第二言語との「熟達度の格差」は,学習者にとって痛いほどはっきりとしている。(Rolfe 1990:164-165)
過去7年間に渡って,どのようにセルフアセスメントを導入するかを学習するという過程の中で,一般的に学習者が好んでいる伝統的なアプローチを簡単に取り替えることはできないということを発見した。学習者の自立学習のために必要な能力・知識を,すでにもっている言語・学習に関する考えとよく混ぜ合わせながら導入していく必要がある。(Aiken and Pearce 1991:23)
セルフアセスメントの能力は,第二言語あるいは外国語を学ぶ学習者の全員が持っている能力ではない。このことは教育が十分にされていない学習者や教師中心の教育に慣れている学習者に特にあてはまる。(Khoe and Llewelyn 1992:11)
自己評価のコースを進めるにおいて,大部分の学習者が伝統的な評価を期待していること,それを学習者の第一言語で形式的に正しく表そうとしていること,さらに教師からの訂正を期待していることはおそらく大きな障害である。(Aiken and Pearce 1991:22)
研究結果
セルフアセスメントをすることによって,学習者は自分の学習過程に責任をもつことができ,自分の弱点の診断や,自分の言語能力を総括的に見ることができる。さらにモチベーションを高め,学習者は目標に向かって言語学習を行うことができる。また,セルフアセスメントは,学習者自身の運用能力をモニターするため,さらには教師からの指示がなくなったときに学習の自己管理をするために使用できる基準を作るのに役に立つ。(Brindley 1989, Von Elek and Dickinsonより引用)
もしセルフアセスメントが第三者のフォーマルな評価としてではなく,コースの中で他の評価活動に付属するインフォーマルなものとして使用されているのであれば,セルフアセスメンのあいまいな妥当性・信頼性への批判は,適当ではない。
自己評価は段階的に導入される必要がある。
学習者は,自己評価する方法を学習する必要がある。
評価は完全に教師の役割だとみなす学習者は,セルフアセスメントの概念を理解するのに苦労するかもしれない。
セルフアセスメントは,学習者の文化的な見解と合わないものかもしれない。
学習者が効果的にセルフアセスメントを行おうとするならば,その理論的な根拠や適切さを理解する必要がある。
最も効果的なセルフアセスメントの方法は,学習者が具体的な状況またはタスクの問題点を評価することであるかもしれない。
WHAT RESEARCHERS say
セルフアセスメントにおいて,書き込み式のワークシートやフォーマルな評価活動から始める必要はない。学習のあらゆる場面に,学習者にとっての負担を段階的ではあるが確実に前向きに進歩させる可能性が秘められている。それゆえ,あらゆる場面でセルフアセスメントの練習を行うことができる。(Jackson 1994: 117)
セルフアセスメントの形式は,それ自体が学習のある特定の段階での題目,あるいは言葉の形の特徴をつかむ好例となりうる。教師はその特徴を,モデルを使った方法や構造をつなげる,またはばらばらに扱う方法で教えることができる。(Khoe and Llewelyn 1992: 15)
説明するのが難しいという理由で,セルフアセスメントという重要な学習の過程を避けてはいけない。セルフアセスメントを初級から行うことによって,学習者は自分の学習ストラテジーの一つとしてそれを自然に身につけるであろう。(Willing 1989a: 77)
我々は,学習者が評価を話しあうためのメタ言語的要素を発達させる手助けをしてきた。学習者のある問題についてブレインストーム(グループの中で自発的にアイデアを出し合う問題解決法)を何度も行い,そこで我々は学習者の発話をセルフアセスメントの形にあった言葉に変える手助けをした。(Khoe and Llewelyn 1992: 13)
学習者はセルフアセスメントを教師側の評価のひとつとして受けとめ,教師のコメントに対して否定的な態度をとるかもしれない。あるいは,彼らは自分たちの成功を受け入れることを,認めることのできない「おごり」と考えているかもしれない。(Lewis 1990: 203)
もし学習者がセルフアセスメントは自分たちの学習や学習の次の段階を計画するのに役立つものだと理解すれば,自分たちの言語活動を評価し始めるだろう。(Aiken and Pearce 1991: 24)
学習者の実生活に基づいたタスクや場面であろうと,そうではないものであろうと,それらの難易度を測るセルフアセスメント用のツールのほうが,学習者に自分の得意とする能力と苦手とするところとをただ分析させるものよりも学習者にとってはとりかかりやすそうだった。このことを考慮して,教師は学習者の教室以外での言語使用場面を評価できるセルフアセスメントツールを学習者に提供すべきである。こうすることで,学習目標の個人化と学習動機の増加を促すことができるだろう。(Lewis 1990: 203)
Suggestions for the classroom
セルフアセスメントを「日課とし,明確で目に見え,それでいて教室における練習の自然な一部分」(Jackson 1994: 117)とすべきである。
- 必要であればいつも使っているセルフアセスメントの用紙の翻訳を使ってもよい。
- セルフアセスメントに使うツールの形式だけでなくその使用目的も学習者に説明しよう。
- セルフアセスメントを行う際に必要と思われる言葉を教えよう。
- 「引用文献」に載っているWilling(1989a and 1989b)の,セルフアセスメントの方法と活動についての部分も参考にしよう。
実践例
以下のいくつかの例を実際の教授場面で使えるように考えてみよう。
以下の活動(Numan and Burton 1989bより)は学習者の学習能力に焦点をあてたコース用にデザインされている。
- 短い会話,ビデオ,もしくは教科書の本文からメモをとった後,学習者に教室内を動き回り,他の学習者と自分のメモについて話し合うように指示しよう。その際,必要ならばメモの誤りを訂正させるようにすべきである。こうすることで,学習者は自分たちのメモが間違っていることを教師から言われることなく,より正確なものを作り上げることができる。また,教師はそこで学習者同士のやりとりを観察でき,後のコミュニケーションストラテジーのための活動に役立てることができるであろう。
- あるいは,自分たちのメモについての話し合いをさせるために学習者を少人数のグループに分けることもできるだろう。そこではある一人の学習者がグループのリーダーとなり,教師からメモのサンプルのコピーを手渡される。他の学習者は情報を整理やメモを書き直すためにさまざまな質問をしなければならない。
以下の「学習日記」は,若く理解が早い学習者のために考案され,学習者に自分の言語学習を構造的で分かりやすい形で再考させるひとつの方法である。あまり構造的でなくなるけれども,他の方法として学習者の言語学習日記や,定期的に教師に手紙で学習の現状を報告するということが挙げられる。
「学習日記」
以下の質問事項は,教室での授業や教室外で,どのように勉強したか,あるいは何を勉強したかについて記録するのを助けるものである。
- 次のような形式で,毎回のレッスンの後や,あるいは,毎週週末について,ひとつ書き入れなさい。
- あなたの興味のあるものについてのみ書きなさい。
- きょう,練習したこと:
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- きょう,学習したこと:
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- きょう,英語を話したのは,いつ?:
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- きょう,誰に英語を話した?:
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- きょう,じょうずに言えたことは,何?:
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- 難しいと思ったことは何?:
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- 知りたいことは?:
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- あした,することは?:
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あらゆるタスクや活動によって,学習者はコミュニケーション上の必要性と言葉との間に関連性を持たせ,学習者がしていることの目的を話し合う機会を持つことができる。こうすれば,学習者は自分達の目標や,それを達成することを認識するであろう。(Nunan and Burton 1989b: 36)
De Leon (1992)は,初級,オーラル,表記のアクションリサーチの一部として,セルフアセスメントの基本的な考え方やセルフアセスメント用のタスクとテキストなどの理解を図るための教材や活動を開発した。次のテキストサンプルは彼女のアプローチを明示したものである。
- 私は,車を運転することができる。
- 私は,車を運転することができない。
- 私は,手助けなしに,住所を書くことができる。
- 私は,少し助けてもらって,住所を書くことができる。
- 私は,住所を見ながらまねて書くことができる。
適切な教材をデザインするのは時間がかかり綿密な計画を必要とするが,時間を有効に使うことができる。(de Leon 1992:9)
Khoe and Llewelyn (1992)は,学習者がテキストの構成と言葉に関する知識を使用する際に役立つ教師のインプットの種類を見つけ出すために,中級のビジネス向けクラスのアクションリサーチプロジェクトを示している。
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1. 会社の情報 ‐会社の概要を理解できる |
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2. インストラクション ‐インストラクションについて理解できる ‐書式に記入できる |
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3. 個人情報について ‐書式の内容が理解できる ‐情報を書くことができる |
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4. 健康状況について ‐書式の内容を理解できる ‐情報を書くことができる |
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5. 一般的な情報について ‐書式の内容を理解できる ‐情報を書くことができる |
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6. 学歴について ‐書式の内容を理解できる ‐情報を書くことができる |
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7. 職歴と推薦状について ‐書式の内容を理解できる ‐情報を書くことができる |
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もうすこし訓練が必要なことは? | . |
学習者はタスク(例えば,上の表を埋める)が終わった後で,このタスクを参考に作られたセルフアセスメント用紙を配られた。この用紙は教室でクラス活動として分析され,我々は学習者に,セルフアセスメントの段階がテキストの段階と関連していることを示すことができた。(Khoe and Llewelyn 1992:12)