わせだの森:森で育まれた卒業生のいま

「多文化共生」をめざすなら――小島佳子

神奈川県立国際言語文化アカデミア常勤講師:紹介ページ

「多文化共生」をよく耳にしますが,具体的にどんなカタチを指すのでしょうか。

すでに陳腐化した「多文化共生」に違和感すらあった時に出会ったのが,一から作れる「実践1: わせだの森」でした。当時は「価値観や背景,世代が異なる外国人と日本人,そして日本人同士が同じ目線で共に考え話す中で,互いから学び合う場」を理念に,一から教室を作りました。

印象的だったのは,家族がテーマの回。日本語がほぼ初習だったある参加者が,辞書を引き引き,まわりに助けられながらグループの代表として語った,亡くなった家族の話。本当に語りたいことは,ことば(日本語)がなくても,語れると知りました。また,一人で話しすぎる日本人参加者への対応策として,「社会ルール」を考える活動を行い,教室全体に互いの理解が生まれた回も印象的でした。

ここで生まれたのは,日本語力の差を埋め合いながら理解し合おうとする姿,そして,外国人とだけでなく,世代や価値観が異なる日本人とも共に在ろうとする,まさに「多文化共生」の姿でした。

私は現在,県立機関で,県民の「多文化共生」に資する力を養う講座(外国人向け日本語講座や日本語ボランティア講座)を担当していますが,「目指すべき『多文化共生』は,わせだの森のような場」と具体論で語れることが,仕事の上での大きな強みになっています。

(2007年秋履修)

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