第12号(2021年10月刊行)
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目次
今,幼少期より複数言語環境で成長する子どもたちが世界各地で拡大しています。その子どもたちが親や祖父母に繋がる言語を学ぶ教育は,「継承語教育」と一般に呼ばれています。では,子どもが受ける「継承語教育」を,私たちはどのように捉えたらよいのでしょうか。親や教育実践者はどのような意識や見方を持っているのでしょうか。子どものもつ複言語を育てていくという視点や,「継承語教育」を受ける子ども自身が「継承語」をどのように受け止めているかという視点も,必要なのではないでしょうか。
日本語だけではなく,移民言語,先住民言語,地域語など,今,成長する子どもたちが学ぶ「継承語教育」は,多様に展開されています。その実践の中で,「継承語教育」に関わる大人や子どもには,様々な思いや試行錯誤,不安,葛藤もあるかもしれません。それらの思いも視野に入れながら,「継承語教育」のあり方,実践の方法,子どもの現状と
成長を捉え直し,21世紀の子どもたちの「ことばの教育」を考えたいと思います。
寄稿論文 ― 特集:「継承語教育」を問い直す
研究論文 ― 特集:「継承語教育」を問い直す
- 西島 阿弥子,深澤 伸子,藤井 瑞葉,ツムサターン 真希子,千石 昂
研究ノート ― 特集:「継承語教育」を問い直す
研究ノート ― 特集:「継承語教育」を問い直す
エッセイ ― 特集:「継承語教育」を問い直す
エッセイ ― 特集:「継承語教育」を問い直す
エッセイ ― 特集:「継承語教育」を問い直す
エッセイ ― 特集:「継承語教育」を問い直す
書評
特集:「継承語教育」を問い直す
(編集部)
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【特集:寄稿論文】
継承語から繋生語へ ― 日本と繋がる子どもたちのことばを考える
トムソン木下千尋(ニューサウスウェールズ大学日本研究課程,豪州繋生語研究会)
- ■要旨
- 移民先で親の言語を伝承していく場合,「継承語」ということばが使われてきました。移民のことばを語る上で大切な役割を果たしてきたことばですが,制約もあります。本稿では「継承語」に代わる「繋生語(けいしょうご)」という新しいことばを提唱します。「繋生語」は,海外に住む日本と繋がる子どもたちのことばを表します。子どもたちが親から受け継ぐことばも含め,親や家族,友だち,社会との繋がりから生まれ,さらなる繋がりを生み,そこで新しい意味を生み出し,その繋がりを次の世代に繋げていくことばです。オーストラリア在住の日本と繋がる子どもたちのことばを私(筆者)がどのように考えてきたか,「継承語」ということばでは表しきれない子どもたちのことばを「繋生語」という新しいことばで表したいと思うようになった過程を共有し考察します。
- ■キーワード
- 日本と繋がる子どもたち
- 繋生語
- 継承語
- オーストラリア
- 複言語主義
- 「わたし語」
- ■Entry
- トムソン木下千尋(2021).継承語から繋生語へ―日本と繋がる子どもたちのことばを考える『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,2-23.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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【特集:研究論文】
「言語と文化の継承」を超えた継承日本語教育とは ― タイ「バイリンガルの子どものための日本語教室」における親による実践報告と親子の語りから
西島阿弥子*,深澤伸子†,藤井瑞葉*,ツムサターン真希子*,千石昂*
(*JMHERAT運営委員,†JMHERAT代表)
- ■要旨
- 本研究は,親の母語である日本語を子どもに受け継ぐことを目的とした「継承日本語教育」を問い直し,子どもの視点に立った「継承日本語教育」のあり方を考えるものである。親全員が教師役を担い,子どもの視点に立ったテーマ型・体験型活動の実践を創っているタイの「バイリンガルの子どものための日本語教室」を特集したセミナーを事例に,親による実践報告と,親と子それぞれへのインタビュー調査報告を分析した。その結果,親子双方が教室活動に楽しみを見出し,家庭と教室の学びが往還し,親子にとっての学びの意義が重なっていることが明らかになった。子どもの言語使用の現実から出発し,子どもの全人的成長を目指した教育実践を「継承日本語教育」の一つのあり方として示す。
- ■キーワード
- 子どもの視点
- 継承日本語教育
- テーマ型体験活動
- 親が創る教室
- 実践の語り
- 複言語複文化
- ■Entry
- 西島阿弥子,深澤伸子,藤井瑞葉,ツムサターン真希子,千石昂(2021).「言語と文化の継承」を超えた継承日本語教育とは―タイ「バイリンガルの子どものための日本語教室」における親による実践報告と親子の語りから『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,24-56.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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【特集:研究ノート】
複数言語環境を生きる子どもたちのことばの学び ― ハワイの高校生へのアンケート調査から
尾関史(University of Hawaiʻi at Mānoa Outreach College)
- ■要旨
- 本研究では,ハワイにおいて複数言語環境で育つ子どもたちの言語教育のあり方を探ることを目的とし,複数言語環境で育ってきた経験を持つ高校生にアンケート調査を行った。生徒たちの複数言語使用の実態とはどのようなものなのか,複数言語使用は生徒たちにどのように捉えられており,どのような意味を持っているのかを探った。考察の結果,それぞれの言語が生徒たちの生活や人間関係を支えるものとして捉えられ,それぞれの役割を持って使用されていることがわかった。一方で,それぞれの言語使用の度合いや言語使用に対する思い,言語習得に対する考えは個々人によって大きく異なっていた。そして,複数言語使用に対する意識を形成する際に他者のまなざしが影響を与えていることがわかった。生徒たちはそれぞれ複数言語を自分にとって意味のあるものとして意味づけ,使用しており,その意味づけこそが複数言語を学ぶ意義につながり,複数言語使用や学習を支えるとともに,彼らの人生を支えていることが示された。
- ■キーワード
- 複数言語環境
- 複言語複文化主義
- 継承語教育
- アイデンティティ
- 子どもの意味世界
- ■Entry
- 尾関史(2021).複数言語環境を生きる子どもたちのことばの学び―ハワイの高校生へのアンケート調査から『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,57-73.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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【特集:研究ノート】
中国語使用に対する意識の変容過程と継承語教育のあり方 ― 幼少期に中国から来日した若者のライフストーリーをもとに
太田真実(大阪大学大学院言語文化研究科)
- ■要旨
- 本研究は,幼少期に中国から来日した若者Sの中国語使用に対する意識の変容過程についてライフストーリーを通して明らかにしながら,複数言語環境で成長する子どもたちの継承語教育のあり方を模索しようとするものである。調査の結果,中国語に対する意識は一定不変のものではなく,成長過程によって変容し,その背景には親以外の中国語母語話者や中国留学で出会った多様な複数言語話者との出会いが大きく影響していたことが明らかになった。また,継承語教育については,複数言語環境で成長する子どもたちの継承語を本来備わっているはずの言語として捉えない視点が重要であることが示唆された。
- ■キーワード
- ■Entry
- 太田真実(2021).中国語使用に対する意識の変容過程と継承語教育のあり方―幼少期に中国から来日した若者のライフストーリーをもとに『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,74-91.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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【特集:エッセイ】
補習校に通わせるのは子どものため?それとも,親のエゴ? ― 海外移住者の答えを探して
ケーシー久美(英国在住)
- ■Entry
- ケーシー久美(2021).補習校に通わせるのは子どものため?それとも,親のエゴ?―海外移住者の答えを探して『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,92-95.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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【特集:エッセイ】
みぃちゃん,日本語できるよ ― みぃちゃんがわたしたちに問うていること
中野千野
(コミュニティランゲージスクール教員・オンライン日本語講師・一児の母(豪州在住))
- ■Entry
- 中野千野(2021).みぃちゃん,日本語できるよ―みぃちゃんがわたしたちに問うていること『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,96-105.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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【特集:エッセイ】
タイ国内の移動を繰り返した親と子の言語生活 ― 日本語拒否から,子どもが自分で日本語の価値を見い出し新たな挑戦を始めた我が家の物語
ツムサターン真希子
- ■Entry
- ツムサターン真希子(2021).タイ国内の移動を繰り返した親と子の言語生活―日本語拒否から,子どもが自分で日本語の価値を見い出し新たな挑戦を始めた我が家の物語『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,106-119.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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【特集:エッセイ】
継承語への私の思い ― 子どもとの出会いから
劉碩(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
- ■Entry
- 劉碩(2021).継承語への私の思い―子どもとの出会いから『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,120-125.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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書評
「人間関係を探求」する新たなアプローチへの期待 ― 川上郁雄,三宅和子,岩﨑典子 編(2018).『移動とことば』くろしお出版.
鄭京姫(J-Life日本語教育研究所)
- ■Entry
- 鄭京姫(2021).「人間関係を探求」する新たなアプローチへの期待―川上郁雄,三宅和子,岩﨑典子 編(2018).『移動とことば』くろしお出版.(書評)『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』12,126-134.http://gsjal.jp/childforum/journal_12.html
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