『ジャーナル「移動する子どもたち」――ことばの教育を創発する』では,研究論文等の募集をしています。
詳しくは投稿規程および執筆要領を,バックナンバーは既刊閲覧をご覧下さい。
複数言語環境で成長する子どもは、幼少期より成長期、そして成人となっていく過程で家庭環境、親の教育方針、移動の経験、学校や社会的環境から様々な影響を受けつつ成長していく。その成長過程で、子どもは複数言語のうち、どの言語を使い、どの言語を使わないことも含め、どう生きるかと向き合い続けていく。
例えば、親の教育方針により日本国内のインター校や海外の学校で学ぶ子ども、日本で生まれ親の言語を使えなくなったことを心配した親によって親の出身国へ送られる子ども、海外の複数言語環境で育ち、日本の大学の英語コースへ進学し、将来、日本語を含む複数言語を使用して誕生国での就職か日本での就職かを考える若者、海外で生まれ日本語補習授業校に通うが日本語を学ぶことをやめた後、大学で再度日本語を学ぼうとする若者など、多様な「移動の軌跡」を持つ子どもや若者が、国内外に多数いる。
これらの子どもや若者は、幼少期から人生全体において、家庭内で使用する言語、学校選び、進路・キャリアの選択、パートナーとの付き合い、結婚後の子育ての言語教育、老後の住まいと墓所まで、人生の節目において言語との関係は切り離せない。さらに、どの言語と向き合うかには個人や家族の判断だけではなく、学校や企業、社会、メディアなどからの多様な力や言説が影響を与えていると考えられる。
複数言語環境で育った人の複言語使用の実態については「言語管理理論」や「家庭内言語政策/方針」の研究領域で、「言語選択」の要因、「コード・スイッチング」の現象が分析されることがあったが、それらの研究では複数言語環境で成長する人の、複数言語に関わる、その時々の戸惑い、葛藤、希望、期待、表現できない思いや、それらの中でどのように言語と向き合い、どのように生きようとしているのかという「当事者の営み」はほとんど焦点化されてこなかった。
もちろん、これまでの研究で明らかなように、これらの人々の「ことばの力」は多様な言語資源が混ざり合った複言語・複文化能力と捉えられるし、人々は日常生活においてもマルチ・リテラシーを発揮して多様なコミュニケーションを行いながら生きている。また、いわゆる「母語話者」と同じ言語能力を身につけることだけを理想とする教育実践への疑問や、複数言語能力にデコボコがあることを自然と見る捉え方も広く支持されるようになった。
では、これらの研究動向や成果を踏まえて、これらの「当事者の営み」のリアリティを私たちはどう捉え、どう理解したらよいのだろうか。
親の視点、子どもの視点、教師の視点、社会の視点から、このテーマについて、多様な論考やご意見を募りたい。そこから、未来社会のあり様について共に考えていきたい。
いま,世界中で,移動する子どもたち(*)が増加しています。『ジャーナル「移動する子どもたち」― ことばの教育を創発する』(以下,本誌と略す)はそのような子どもたちのことばの教育について研究交流をする場となることを願って,創設されたジャーナルです。
本誌では,第二言語教育,母語教育,外国語教育,継承語教育などと分けず,子どものことばの学びに関する実践に結びつく研究の発信をめざします。実践には,今の子どもだけではなく,かつて「移動する子ども」だった大学生や大人まで含みます。
移動する子どもたちのことばの教育という課題は,グローバル・イシューであり,それゆえに,世界に共通する理念や教育哲学を作っていくことが,このジャーナルの目的です。
*移動する子どもたち:幼少期に複数言語を使用する環境で成長した子どもたち
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