『ジャーナル「移動する子どもたち」――ことばの教育を創発する』では,研究論文等の募集をしています。
詳しくは投稿規程および執筆要領を,バックナンバーは既刊閲覧をご覧下さい。
子どもは生まれた時から,親の目線や呼びかけ,動作,食などのさまざまな刺激を受けながら成長します。子どもがその刺激を五感(視覚,聴覚,触覚,味覚,嗅覚)で受け止め,その場のことばの意味を類推* することで言語習得が進むと,認知科学では言われています。
つまり,子どもの言語習得は,昨日の記憶をもとに目の前の状況を考え,試行錯誤から意味を類推し,更新する作業と言えます。その作業は,親や周りの人との協働作業であり,かつ,ことばによるやりとりがともないます。そして,ことばの意味を類推する力はことばで考える力につながります。
単言語環境で成長する子どもがこのような過程を経て言語習得を進めると考えると,複数言語環境で成長する子どもは,さらに多くの刺激を受け,記憶を更新し,より多くの試行錯誤の中で複数言語習得を進めていると考えられます。
その経験と記憶は,子どもの振る舞いや成長,人格形成に影響していきます。複数言語環境で成長する子どもにとっての記憶は,親や子どもの周りの多様な他者との多様な言語によるやりとり,つまり「ことばの実践」から形成されます。
この記憶は,幼少期に限りません。成長期における心身の成長,他者のまなざし,多様な言語によるやりとりが新たな記憶を形成していき,その記憶の意味づけも成長や環境によって変化していきます。さらに,成人後,自らの生き方や将来の生活を考えるとき,幼少期からの記憶とことばのやりとりが大きく関わることもあります。
このように考えると,幼少期からの記憶は人生全体に関わり,その記憶の形成や意味づけにはことばのやりとりが深く関わることが考えられます。そこで,本特集では,複数言語環境で成長する子ども・成長した成人を含め,記憶を育む/記憶と向き合うという視点から「ことばの教育実践」,「ことばの学びと記憶の関係」を捉え直してみたいと思います。学術的な論文や研究ノートだけではなく,萌芽的な実践報告や日頃のやりとりから綴るエッセイなど,多様な投稿を期待します。
いま,世界中で,移動する子どもたち(*)が増加しています。『ジャーナル「移動する子どもたち」― ことばの教育を創発する』(以下,本誌と略す)はそのような子どもたちのことばの教育について研究交流をする場となることを願って,創設されたジャーナルです。
本誌では,第二言語教育,母語教育,外国語教育,継承語教育などと分けず,子どものことばの学びに関する実践に結びつく研究の発信をめざします。実践には,今の子どもだけではなく,かつて「移動する子ども」だった大学生や大人まで含みます。
移動する子どもたちのことばの教育という課題は,グローバル・イシューであり,それゆえに,世界に共通する理念や教育哲学を作っていくことが,このジャーナルの目的です。
*移動する子どもたち:幼少期に複数言語を使用する環境で成長した子どもたち
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