第13号(2022年11月刊行)

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目次

特集:子どもの「ことばの実践」を考える


研究論文 ― 特集:子どもの「ことばの実践」を考える


研究論文 ― 特集:子どもの「ことばの実践」を考える


研究論文 ― 特集:子どもの「ことばの実践」を考える


研究ノート ― 特集:子どもの「ことばの実践」を考える


研究ノート ― 特集:子どもの「ことばの実践」を考える




調査報告


書評


エッセイ



特集:子どもの「ことばの実践」を考える

緒言

川上 郁雄(編集委員会委員長)
■Entry
川上郁雄(2022).緒言―特集:子どもの「ことばの実践」を考える『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,1-3.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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【特集:研究論文】
複言語で育ち,複言語で子育てする「移動する子ども」の「ことばの実践」と意味 ― 世代を超えて継承したもの,変化したもの

太田 裕子(早稲田大学グローバルエデュケーションセンター)
■要旨
本研究は,「移動する子ども」の「ことばの実践」を,過去の経験から得られた複数言語の知識や能力を総動員して他者と関わりながら,複数の実践共同体に参加する長期にわたる営みと捉えた。また,アイデンティティを,「ことばの実践」の経験を通して形成され変化し続ける,動態的な意識と捉えた。本研究では,複数言語環境で成長し,複数言語環境で子育てをしている女性のライフストーリーから,世代を超えた「移動する子ども」の「ことばの実践」とその意味づけの変化を描き出した。その結果,「移動する子ども」は親世代の「ことばの実践」や価値観に大きな影響を受けるが,他者と関わり自分が受け入れられたと感じられる経験と,自分の子どもの「ことばの実践」からも影響を受け,親世代から受け継いだ価値観を変容させる可能性があることが分かった。また,本研究の事例から,「移動する子ども」のことばの複数性と動態性を理解し,トランスランゲージング・スペースを作る重要性と可能性が示唆された。
■キーワード
  • 「移動する子ども」
  • 「ことばの実践」
  • トランスランゲージング・スペース
  • 実践共同体
  • ライフストーリー
■Entry
太田裕子(2022).複言語で育ち,複言語で子育てする「移動する子ども」の「ことばの実践」と意味―世代を超えて継承したもの,変化したもの『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,4-37.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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【特集:研究論文】
JSL高校生が第二言語である日本語で「書く」ことにはどのような意味があるか ― 子どもの「ことばの実態」から考える

小林 美希(早稲田大学大学院日本語教育研究科
■要旨
本研究では,JSL生徒が日本語でどのように書き,どのような「ことばの実態」が見られるのかを,小論文を「書く」実践を分析することにより明らかにした。分析の結果,JSL生徒の「ことばの実態」として3点―①未成熟な言語資源を駆使しながら,第二言語である日本語で自身の考えを形づくろうとしている点 ②書き手の思考や考えに関する「自己表現」に関わる内容と,語彙や文法などに関する「言語」に関わる内容,それぞれの学びが絡み合いながら「ことばの学び」が螺旋状に進んでいる点 ③言語資源を駆使して生み出したプロダクトが認められ,スキャフォールディングが講じられることによって,授業実践に取り組む姿勢に変化が見られるという点―が明らかになった。これらの分析結果を踏まえ,JSL生徒にとって第二言語である日本語で「書く」ことの意味とは,「自身の考えを他者に論理的に説明し,表現できる論理的な思考力」を育み,認知や思考を支えるリテラシーを獲得すること,さらに,このようなリテラシーを使いながら,自己実現を果たしていく力として新たなリテラシーを獲得していくことを論じた。その上で,子どものリテラシーの総体として「ことばの力」を捉えるということが,子ども自身を捉えることになり,子どもの「アイデンティティの構築」を支えていくことになることを述べた。
■キーワード
  • JSL高校生
  • 書く
  • 発達段階
  • アイデンティティ
  • 論理的思考力
■Entry
小林美希(2022).JSL高校生が第二言語である日本語で「書く」ことにはどのような意味があるか―子どもの「ことばの実態」から考える『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,38-71.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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【特集:研究論文】
複数言語内の位置づけから考える継承語 ― 対話的構築主義アプローチに基づくライフストーリーをもとに

太田 真実(大阪大学大学院言語文化研究科)
■要旨
本研究は幼少期より複数言語環境で成長した若者の複数言語内における継承語について,その他の言語の位置づけとの差異を検討しながら,個人の中にどのように位置づけられているかについてライフストーリーをもとに明らかにすることを目的としている。調査の結果,調査協力者にとっての継承語は日常的に使用する日本語と存在感としては同じでありながらも,学習においては学ばなければならないものとしてやや強制力が伴うことが確認された。また,継承語との距離感については,言語能力の他に,使用頻度や使用相手との関係性を踏まえた使用する際の感情や意義なども考察要素として分析を行った。複数言語環境で成長する子どもたちが増加していく中で,かれらの継承語を現地語との関係のみで捉えるのではなく,成長過程で触れる様々な複数言語の中で継承語の位置づけを考えることで,継承語の特徴がより詳細に表れることを論じた。
■キーワード
  • 複数言語
  • 継承語
  • ライフストーリー
  • 対話
  • 距離感
■Entry
太田真実(2022).複数言語内の位置づけから考える継承語―対話的構築主義アプローチに基づくライフストーリーをもとに『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,72-96.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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【特集:研究ノート】
日本語指導におけるJSL生徒の複数言語使用をどう捉えるか ― メトロリンガリズムの視点から

劉 碩(早稲田大学日本語教育研究科修了)
■要旨
本稿では,筆者が行った日本語指導実践の分析を通して,メトロリンガリズムの視点から,日本語指導におけるJSL生徒の複数言語使用をどう捉えるかについて考察した。分析の結果,複数言語使用とは,先験的・固定的に存在するものではなく,日本語指導において生成された「メトロ・リンガフランカ」であり,日本語指導とは,言語資源を含む様々な資源によって生成された「場」であるということが明らかになった。そして,このような二つの生成性のなかで,生徒と指導員は,自身の言語使用,及び複数言語使用に対する認識を更新していく過程も明らかになった。さらに,JSL生徒が言語資源を含む様々な資源を駆使できる「マルチ・セミオティックな能力」を利用し,自分の人生をデザインする能力の育成を,複数言語を使用する日本語指導において重視すべきであるということが示唆された。
■キーワード
  • JSL生徒
  • 複数言語使用
  • メトロリンガリズム
  • メトロ・リンガフランカ
  • 生成性
  • マルチ・セミオティックな能力
■Entry
劉碩(2022).日本語指導におけるJSL生徒の複数言語使用をどう捉えるか―メトロリンガリズムの視点から『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,97-125.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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【特集:研究ノート】
親子間使用言語を日本語とするニューカマーの親子から見えることばの実践への意味付けと親子関係 ― ことば観との関わりに着目して

中家 晶瑛(お茶の水女子大学大学院人間創成文化研究科)
■要旨
本稿は,親子間使用言語を日本語とするニューカマーの親子を対象とし,彼らのことば観はことばの実践の意味付けと親子関係にいかに関わるかを明らかにすることを目的とした。語りから,Aさんのことば観およびことばの実践への意味付けは,「不安感を秘めた言語能力意識」(川上編,2010)が見られなかったが,自ら生き方を選択していくようになったAさんの姿勢を支えるものであることがうかがえた。父親Bさんには,より良い教育の追求という子どもに対する言語教育への責任感も見られた。また,ことば観と密接に関わりながら2つの親子関係が築かれ,そのうちの1つから親子の情緒的なつながりの形成がみられた。その結果,親子の情緒的なつながりの形成は,親の言語能力や親子間使用言語に左右されないことと,さまざまな環境から複合的に形成される親子関係も重視する必要性が示唆された。
■キーワード
  • 親子間使用言語
  • 継承語
  • ことば観
  • ことばの実践
  • 親子関係
■Entry
中家 晶瑛(2022).親子間使用言語を日本語とするニューカマーの親子から見えることばの実践への意味付けと親子関係―ことば観との関わりに着目して『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,126-161.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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調査報告

学校選択調査から見えたFamily Language Policyに影響する要因の一考察―タイに住む日本人家族と泰日国際家族はなぜ日本語を学習言語としたのか

松岡 里奈(大阪大学日本語日本文化教育センター),久保 亜樹(国際交流基金
ベトナム日本文化交流センター),齋藤 沙夜花(ロンドン大学大学院),
村木 佳子(シラパコーン大学),常見 千絵(泰日工業大学)
■要旨
タイで子育てをする日本につながる家族の言語政策(Family Language Policy)を把握するために,タイで学校選択を経験した日本人家族および泰日国際家族の保護者を対象に学校選択とその意識に関わるアンケート調査を実施した。全回答のうち,教科学習に用いられる言語(以下,学習言語)に日本語を選択した経験のある,現在幼稚園の子どもから成人した子どもを持つ日本人家族の保護者99名と泰日国際家族の保護者15名の回答を分析の対象とし,分析の枠組みには「FLPダイナミックモデル」(Curdt-Christiansen & Huang,2020)で示されている外的要因と内的要因を用いた。分析で得られたそれぞれの家族が学習言語に日本語を選択した要因の比較から,日本人家族では【子どものエージェンシー要因】と【子の言語発達は親の責任という意識要因】の要因同士の動的な関わり合い,泰日国際家族では日本語習得という教育的ニーズを日本人学校に求めている実態が見えてきた。また,日本人家族のほうが国家間移動を前提とした生き方をする「移動する家族」であることがわかってきた。
■キーワード
  • Family Language Policyに影響する要因
  • 学校選択
  • 日本人家族
  • 泰日国際家族
  • 日本人学校のニーズ
■Entry
松岡里奈,久保亜樹,齋藤沙夜花,村木佳子,常見千絵(2022).学校選択調査から見えたFamily Language Policyに影響する要因の一考察―タイに住む日本人家族と泰日国際家族はなぜ日本語を学習言語としたのか『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,162-181.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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書評

「移動する子ども」という視点から複言語社会を生きる力を育成するという試み ― 川上郁雄(2020).『探究型アプローチの大学教育実践―早大生が「複言語で育つ子ども」を考える授業』くろしお出版.

佐伯 なつの(早稲田大学大学院日本語教育研究科修了)
■Entry
佐伯なつの(2022).「移動する子ども」という視点から複言語社会を生きる力を育成するという試み―(書評)川上郁雄(2020).『探究型アプローチの大学教育実践―早大生が「複言語で育つ子ども」を考える授業』くろしお出版.『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,182-191.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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エッセイ

ことばの学びと,それがもたらすもの ― 手探りのバイリンガル子育てを振り返って

早川 雅子(ダーラナ大学日本語科)
■Entry
早川雅子(2022).ことばの学びと,それがもたらすもの ― 手探りのバイリンガル子育てを振り返って『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,192-201.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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複言語と向き合う子どもたち ― オーストラリアで育つ日豪国際結婚家庭の事例

松井 美弥子(University of Wollongong)
■Entry
松井美弥子(2022).複言語と向き合う子どもたち―オーストラリアで育つ日豪国際結婚家庭の事例『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する』13,202-208.http://gsjal.jp/childforum/journal_13.html
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